磁石は昔から存在し、今日までさまざまな用途で活用されてきました。最初は天然の磁石を用いていたのが、現在では磁石の開発・製造技術も進み、生活のあらゆる場面に活かされています。その製造作成方法にはいくつか種類があり、性能もいろいろです。ここでは磁石がどのようにして製造作成されるかを紹介します。
■磁石の作り方
・磁化によって磁石になる
磁石を製造するには、複数の方法があると述べました。しかし、どの方法も「磁化させる」という点では共通した原理です。磁化とは、分子磁石の方向をそろえた状態を表したもの。磁石の素となる物質の中には、分子磁石と呼ばれる小さな磁石が多く含まれています。分子磁石は通常バラバラの方向を向いているため、そのままでは磁石としての効果がありません。このため、分子磁石の向きをそろえる必要があるのです。
分子磁石は素材によって、動きやすいものと動きにくいものが存在します。一度磁化したら磁石になり続ける仕組みは、分子磁石が動きにくいことが理由です。このような磁石を「永久磁石」と呼びます。
・磁石の材料
磁石の材料にはいくつか種類がありますが、いずれも自然に存在する鉱物からつくられています。素材となる主な原石は、鉄と銅です。磁石の原料として利用する鉄は、自然鉄と呼ばれる採掘されたものを使用します。自然に採掘された鉄は多くの不純物を含んでおり、純粋な鉄よりも錆びにくいためです。銅はそのままだと磁石につかない金属ですが、コイルに巻く同線として利用されます。
また鉱石の中には、最初から磁石の性質をもった天然磁石も存在します。これらは磁鉄鉱やマグネタイトとよばれ、そのままでも磁石としての使用が可能です。
・強力な磁石を作るには希土類元素が必要
強い磁石をつくるのには、鉱石のほかにも元素が欠かせません。特にレアアースと称される希土類元素は、近年多くの注目を集めている物質。希土類元素を素材に用いた磁石は、希土類磁石と呼ばれています。近年主流のネオジム磁石は、この希土類磁石に属しており、強い磁力が特徴です。ネオジム磁石の素材となるネオジムは、モズナ石などの鉱物から採取した天然のものが使用されます。
・昔は3つの製造方法があった
古くから人々の生活に利用されてきた磁石。今では効率よく大量の磁石を製造できますが、昔は職人の手作業によるものでした。昔使用されていた製造方法は、大きく分けて3種類です。まずひとつは、天然磁石を用いた方法。それぞれの極に鋼を接触させることで磁石にしたといいます。次に、南北方向に向けて熱した鉄を冷やすやり方は、地球の磁場を利用した方法です。この際に叩いて磁石にする方法が3つ目にあたり、いずれも鉄の中の分子磁石を動かし製造を行っています。
■永久磁石ができるまで
現代における永久磁石の製造方法は、いくつかの工程に分けることで、安定した品質で大量につくれるようになりました。最初の工程は、採掘された材料の組み合わせです。ここでは磁石に必要な材料を種類ごとに測って調合します。その後は配合を終えた材料を溶かし、型に流し込む作業へ。溶かして均一となった原料は粒状に粉砕され、専用のプレス機械でN極とS極を一定にそろえて成型し、その後焼き固めて、磁気があるか検査をします。
検査後は、研磨を行って製品としての形に加工。ネオジム磁石のような錆びやすい磁石は、加工後にメッキや塗装で表面処理を行います。見た目や耐久に関する試験で合格したものは、着磁と呼ばれる作業を経て、ふたたび磁気の検査をして完成です。完成した磁石は梱包されて発送されます。
■電磁石の作り方
磁石は電流を利用してつくることもできます。これは、電流が流れている箇所に磁力が働く原理を活かした方法です。この電流を利用した電磁石は、鉄芯に巻いたコイルによって作成されます。コイルのみでも電磁石としての機能は果たしますが、鉄芯を入れることでより強力な磁石にすることが可能です。
芯に用いる材質は、鉄以外にコバルトやニッケルも使用できます。比較的単純な構造で、電流の強さやコイルの巻き数、芯の太さによって磁力が変化することが特徴。強力な電磁石は専用の設備が必要ですが、乾電池を電源にして電磁石をつくることもできます。
■家でもできる磁石の作り方
・クリップを磁石にする
磁石は工作をすることで、家でもつくることができます。クリップを磁石にする方法は、その中でも代表的な方法でしょう。やり方は簡単で、クリップを磁石でこするだけです。こすられたクリップは、磁石を遠ざけていてもほかのクリップにくっつきます。これは磁石をこすることで、一時的にクリップを磁石に変えているからです。必要なものは磁石とクリップだけなので、気になる方は試してみてはいかがでしょうか。
・針に磁力を持たせてコンパスにする
この方法を応用すると、ただのぬい針をコンパスにすることができます。必要なものは針と磁石、洗面器です。もし磁石がない場合は、毛布でも代用ができます。やり方は先ほどと同じように、針に磁石をこすりつけてください。コツは同じ向きに50回程度行うことです。それが終わったら、水を張った洗面器に針を浮かべてみましょう。針が沈むようであれば、コルクや葉っぱのような水に浮かぶ軽いものに乗せても構いません。磁石の性質をもった針は、コンパスとして南北を示すはずです。