ネオジム磁石は、流通しているものの中でも最も主流の磁石です。小さくても十分な磁力があるため、多くの工業製品に使用されています。また強度にも優れ、日用品などに使用されることも珍しくありません。ここではネオジム磁石について紹介します。
■ネオジムが含まれた磁石
ネオジム磁石はその名の通り、金属元素であるネオジムを使用した磁石です。ネオジムはレアアースと呼ばれる希土類の一種とされています。ネオジム以外に使用される主な素材は、鉄とホウ酸です。それぞれの割合は、鉄が本来持つ磁力を効率よく引き出せるような内容で、磁石のグレードによっても多少異なります。
なお磁石の原料となるネオジムは、中国からの輸出されたものが多くを占めています。純粋なネオジムの鉱石は存在しないため、原石となる鉱石を精製してから使用するケースが大半。近年ではネオジムの需要が高まっているため、価格は上昇傾向にあります。
■日本で発見された磁石
世界中に普及しているネオジム磁石ですが、じつは日本で最初に開発されたという背景があります。1982年に開発、1983年には製品化され、瞬く間に世界へ広まっていきました。2018年現在、開発に関する基本的な特許は切れているものの、いくつかの技術に関するものは今でも国内に残っています。
現在ではさまざまな国やメーカーがネオジム磁石を開発していますが、日本は最も先進的な技術を持つ国としてリードしています。さらにレアアースを削減した新しい磁石の開発を進めていることから、今後も注目を集めることでしょう。
■ネオジム磁石の特徴
・磁力が強い
圧倒的な磁力の強さは、ネオジム磁石の大きな特徴です。多くの種類がある磁石の中でも、特に強い磁力を誇ります。それまで主流だったフェライト磁石に比べると、その磁力は10倍近く。このため現在では、最もメジャーな磁石のひとつになりました。小型でも強力なネオジム磁石は、日常生活に欠かせないさまざまな機器に使用されています。
しかし、扱いには注意が必要です。2個以上の磁石を使用する際、指などが挟まれて怪我をする恐れがあります。また精密機器や磁気カードに近づけると、データに影響を与えかねないため注意してください。
・安価で機械的強度に優れている
ネオジム磁石のもうひとつの特徴に、安価で手に入ることがあげられます。レアアースが使用されているため、値段は高いのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、主な原材料には安価な鉄を使用していることから、全体の費用は安く抑えることができます。多くのメーカーがネオジム磁石を出していますが、安いものであれば、100円ショップでも入手できるほどリーズナブルです。
また、強度が高いこともこの磁石の強み。欠けにくく長持ちするので、多くの工業製品に最適な素材として用いられています。
・熱に弱い
強力で頑丈なネオジム磁石ですが、ほかの磁石と比べて熱に弱い性質を持ちます。磁石が磁力を失う温度のことをキュリー温度といいますが、ネオジム磁石はこのキュリー温度が低く、大体300℃前後です。この数値は、サマリウムコバルト磁石やアルニコ磁石の半分程度となっています。
また熱による減衰の幅が比較的大きいことも特徴です。たとえば100℃以上の高温使用の場合は、適切な形状や材質の選択が必要です。但し、100℃以上でも材質、形状を適切に選べばほとんどの用途では問題はありません。
・錆びやすい
ほかの磁石と比べて錆びやすいことも、ネオジム磁石の特徴です。表面が錆びてしまうと磁力が低下するため、製造時にメッキや塗装などの表面処理を行うことで問題を解決しています。そのためネオジム磁石は、銀色にメッキされているものが一般的です。
しかし、まれに使用時の衝撃や経年変化によって、メッキが剥がれてしまうことがあります。磁石自体は強度に優れていても、メッキの剥がれには注意して使用することが望ましいでしょう。万が一剥がれてしまった場合、コーティング剤を使用することで錆対策ができます。
■ネオジム磁石の製造方法
多くのメーカーで採用されている製造方法は、粉末状にした原料を焼き固める方法が一般的です。最初に原料となるネオジムや鉄、ホウ酸などを溶解し混ぜ合わせて合金をつくります。その後粉砕して成形。焼き固めてから形を加工します。ネオジム磁石の特徴的なメッキ加工は、加工後に行う工程です。メッキを終えた磁石は、検査された後に着磁と呼ばれる磁気を付ける作業に入ります。着磁を終えて問題がなければ磁力の検査をして完成です。
■ネオジム磁石の用途
安価で強力なネオジム磁石は、さまざまな用途で使用されています。加工をしなくとも十分な効果が得られるため、冷蔵庫の扉や磁石式の荷物用フックとしても利用することが可能です。
また、ネオジム磁石は小さなサイズでも強力な磁力を発揮することから、精密機器に利用されることも少なくありません。身近な例だとスマートフォンやイヤフォンが挙げられます。特にイヤフォンにおいては、中に入っている磁石の性能で音質が変化する重要な素材です。そのほかハードディスクにも利用されています。コンパクトな筐体で大量のデータを読み書きするため、ネオジム磁石は欠かせません。