磁石が持つ磁力は、あらゆるものに対して影響を与えます。それでは、人体にはどのような影響作用があるのでしょうか?磁力によるコリの緩和や痛みの軽減や健康効果は本当なのか気になる方もいるかもしれません。ここでは磁石が私たちの身体に与える影響について解説します。
■磁石の健康効果とは?
「磁石の力で血行を促進する」「磁力で肩こりを軽減する」とうたった治療器や健康グッズは市場に多く存在します。1970年代には、国内だけでなく海外でも一躍ブームとなりました。しかし、実際に磁石には健康効果があるのでしょうか?
・磁石を用いた治療器は存在する
磁石を用いて人工的に磁界を作り、磁力線を利用して患部の血行促進や痛み・コリを改善する治療器を「磁気治療器」と呼びます。こちらは薬局やドラッグストアなどでも購入できますが、日本においては薬事法によってきちんと管理されており、「管理医療機器」として区分されています。しかし製品認可のハードルはそこまで高くないため、製品の有効性に関してはメーカーに委ねられるといえるでしょう。
磁気治療器は、大きく分けてコイル状に交流電流を流して磁場を作るタイプと、永久磁石の静磁界を利用するタイプの2種類です。機器の形状はさまざまで、患部にあてて使用する製品やベッドに内蔵されているタイプがあります。またネックレスやブレスレットといった身につけられるアクセサリータイプもあるようです。
現在考えられているメカニズムの一説として、血液に磁界を加えると、フレミング左手の法則に従って血液中の正・負イオンはそれぞれ移動することで反対方向に偏ります。そこに電流が流れることで血液中の電解質がイオンとして解離し、増加します。イオンが増えることで自律神経の働きが良くなり、血流が促進されると考えられているようです。
・磁石は肩こりに効くのか?
磁気による治療器は多くありますが、磁石が持つ肩こりへの影響は実際のところ明らかになっておりません。磁石を使ってコリが良くなる論拠として、ヘモグロビン酸素放出説やコリンエステラーゼ抑制説などさまざまな説あります。しかし、いずれも充分な実験データがないため科学的に確立されておらず、ハッキリ「この作用のためコリが改善する」と説明できるところまで到達していないことが現状です。
また医療機器であるMRIでは磁気治療器よりもはるかに強い磁力が発生しますが、身体的な影響はありません。ただ使用時間や環境など磁気治療器とは異なる点も多いため、一概にはいえないでしょう。
・詳しい効果はまだ未知数
磁気を利用した健康グッズは、人によって実感が異なります。「高い効果がある!」と思う人がいれば、「あまり効果を感じられなかった」と思う人もいます。効果の有無に関しては、コリの原因や自律神経の状態などさまざまな要因が複雑に関わってくるため、磁石のみの効果については一概にはいえません。
磁場は身体の奥まで効果が届くとされています。そのため、身体の表面に電流を流して筋肉を収縮させるスポーツ用器具よりも、高い効果があるのではないかとされています。しかし、こちらも明確な確証を得ていないため、磁石の詳しい効果はいまだに未知数なものが多いといえるでしょう。
■人によって影響を与えることがある
磁石の持つ磁力は、基本的には健康を害するほど人体に影響を与えることはありません。なかには血液中の鉄分が磁石に引き寄せられるのではと心配する人がいるかもしれません。しかし体内の鉄分と実際の鉄は、全くの別物なので実際に磁石に引き寄せられることはありません。しかし、場合によっては磁石の取り扱いに注意が必要な方もいます。
・ペースメーカーを使用している人は注意が必要
埋め込み型の電子医療器具であるペースメーカーは、日常生活でさまざまな影響を受ける可能性があります。強力な磁石は、その原因のひとつになる場合があります。そのため決して胸ポケットに磁石を入れたりペースメーカーに磁石を近づけたりしないようにしてください。正常な動作を妨げるため、場合によっては命の危険性もあります。また、磁気治療器の使用は避け、MRIなども医師の指示に従うようにしましょう。
・ネオジム磁石のメッキがアレルギーを起こす場合も
ネオジム磁石そのものではなく、磁石の表面に施されているメッキによって金属アレルギーを起こす可能性があります。特にニッケルは、耐食性に優れていて錆びにくく、硬度が高いため磁石のコーティングによく使用される傾向です。ニッケルメッキでアレルギーを起こすと、皮膚にかゆみや赤い斑点といった肌荒れが生じます。悪化すると水疱ができたり化膿したりするため、金属に敏感に反応するアレルギー方は、直接触らないように注意してください。
・取り扱い時は怪我に注意
磁石のなかでも特に超強力な磁力を持つネオジム磁石は、吸着する際に指や皮膚をはさむなどの怪我をするリスクがあります。また吸着時の衝撃で磁石が欠け、破片が飛び散ることもあるようです。その際は手袋や防護メガネを着用するなど、取り扱いに充分注意してください。また、飲み込んでしまうと命に関わる危険があるため、必ず子供の手の届かない場所に保管しましょう。
磁石には、少なからず人体に影響を与える力があると考えられています。程度の差はありますが安全に使用するためには、よく注意した上で使用することが望ましいです。