時計は、いまの時刻を私たちに教えてくれる身近な存在です。そんな時計が、一体どうやって動いているのかはご存知でしょうか?時計が正確に動くためには、磁石が重要な役割をしています。時計が動くための磁石の仕組みや、磁石との関係性についてご紹介しましょう。
■磁石は時計に欠かせない部品
●正確なクォーツ時計を支える磁石
クォーツ式腕時計は、毎秒3万2768回振動していると言われています。振動によって信号をつくり、この信号をステッピングモーターに伝えることで針を正確に動かします。
ステッピングモーターに使われている部品が磁石です。小さな永久磁石が、ステッピングモーターの電磁石に1ヘルツの交流信号が流します。その度に発生する磁界の向きも交互に切り替わり、永久磁石との間で反発や吸引が繰り返されます。
ローターは毎秒1回のリズムで、同じ方向に回転することで、時計が正確に時を刻みます。ステッピングモーターは磁力を用いているため、摩擦も少ないため部品交換もほとんど必要ありません。
●最新のスマートウォッチにも用いられている
磁石は、従来の時計以外にも最新のスマートウォッチなどにも用いられています。スマートウォッチは、腕時計のような形状で、手首に装着できるウェアラブルデバイスのことです。時計の機能以外にも電話などの通信といったスマートデバイスの機能も備わっているスマートウォッチですが、この機能のうち、充電のロックや送電用のコイル、モーターなどといった、さまざまな範囲で磁石は使用されています。
磁石はスマートウォッチに限らず、パソコンや家電製品など幅広い分野で用いられています。私たちの現代を作り上げる上で、欠かせないものの一つと言えるでしょう。
■時計の動作に影響を与える磁石
時計に欠かすことができない磁石。しかしその性質上、外気の磁気による影響をどうしても受けてしまう恐れがあります。密着した状態であれば、強い磁界の影響を受け時計を狂わしてしまいます。時計の種類によって、どのような影響を受けるのか紹介します。
●クォーツ時計(アナログのみ)
アナログ式のクォーツ時計は、磁石の性質を利用するステッピングモーターという装置があります。ステッピングモーターとは、一定の間隔ですぐに電流量を変動せるパルス状の入力電流によって稼働するモーターのことです。パルス電流が入力されるごとに、一定の角度ずつモーターが回転するよう制御されています。
このステッピングモーターには永久磁石が使われているため、強い磁気を受けると誤作動を起こしてしまう恐れがあります。誤作動が生じると、時計が遅れる、早く進む、止まるなどの症状が起き、正常に時計として機能しなくなってしまいます。
●機械式時計
機械式時計のムーブメントの内部部品は金属でできています。そのため強い磁気を受けてしまうと部品が磁化してしまう恐れがあります。時計の内部には、ゼンマイの解ける速度の制御装置にテンプという部品があります。テンプは左右均等に動く振り子のような役割があります。
磁気によって、このテンプの精密な動きに影響を与えることで、時計の精度が悪くなる、針が止まるなどの誤作動を引き起こす恐れがあります。強い磁気を離しても一度磁気の影響を受けることで、時計の精度が悪化したままの状態に陥る可能性が高まってしまうでしょう。そのため、このような状態となってしまった場合には、脱磁を行う必要があります。
●磁気を帯びたら脱磁が必要
もし強い磁気を浴びてしまった場合、脱磁と呼ばれる作業が必要になります。脱磁とは、磁気を取り除くことです。脱磁を行う際には、時計を分解し、1個1個のパーツから磁気を取り除きます。どんなに小さな部品であろうと、磁気の影響を受けている可能性があります。磁気は目で見ることができないからこそ、細部まで丁寧に作業を進めていきます。
自分でも販売されている磁気抜き器を用いて行うことが可能ですが、ただ一般に販売されている磁気抜き器では、手順を間違えることで磁気を浴びさせてしまう恐れもあります。その結果、故障などのリスクを高めることに繋がりますから、できる限りメーカーなどで修理を依頼するようにしましょう。
■磁石の影響を受けない方法
●基本は離す
磁気を浴びさせないためには、時計を磁気が発生するものから離すことが最も大切です。基本的には10cm以上離れて入れば、問題はないと言われています。
そのため、普段時計を腕につけている環境下では、磁気を浴びる可能性は低いと言われています。注意が必要なのは、時計を外し置く場所に対してです。携帯電話やスマホ、パソコンのそばには置くことは避けるようにしてください。またバッグの留め具にも磁気がありますから、バッグの中に入れる場合には、留め具から離すよう心がけましょう。
●耐磁性能のある時計を使用する
大事な時計を長く使い続けるためには、時計の扱い方が大切になってきます。しかし気の緩んだふとしたタイミングなどで、磁気を浴びさせてしまうということも考えられるでしょう。そのような場合のために、耐磁時計を使用するやり方もあります。
耐磁時計であれば、普通の時計よりも扱い方を気にする必要はありません。磁気を発生するものから5cm以上離しておけば、影響を気にする必要はないと考えられています。また、2種強化耐磁時計であれば、1cmでも離しておけば、磁気の影響を受けないと言われています。
耐磁時計は年々種類も増えてきているため、自分好みの耐磁時計も探しやすくなってきています。
■まとめ
普段何気に使っている時計やスマホ、パソコンなど、あらゆる機器に磁石は使用されています。磁石があることによって部品交換の頻度が減るなど、大きなメリットが得られています。しかし、磁石は扱い方が重要です。大事にしている時計などは、他の磁気の影響を受けないように離すようにしましょう。また時計を買い替える場合には、耐磁時計も検討してみても良いかもしれません。