第一回は、磁石の基本的性質と特徴についてのお話になります。
磁石といえば、皆さんが毎日のように使っている身近な永久磁石がありますが、そのほかに、コイルに電流を流す電磁石もあります。また、地球も大きな磁石といって良いでしょう。
<永久磁石と電磁石>
まず、「磁石」、「マグネット」といえば、大きく分けて「永久磁石」と「電磁石」があります。
永久磁石は、いつでも磁石としてはたらき、一つの磁石のN極やS極などの「磁極(じきょく)」は決まっているし、基本的には、磁石としての強さ(磁力・じりょく)も変化しません。
電磁石は、コイル(まき線)に電流が流れているときだけ磁石としてはたらき、電流が止まれば磁石でなくなります。また、電流の向きが変わると、磁極が逆になり、N極がS極に変わったりします。電流を多く流すと、電磁石の磁力も強くなります。電磁石は、ふつう鉄心の上にコイルを巻いた構造になります。ただし、これから説明します磁石としての基本的な性質は、永久磁石も電磁石も変わりありません。
※これからの本コラムでは、特に断らない限り「磁石=マグネット=永久磁石」としてお話を進めてまいりますので、ご了解ください。
永久磁石と電磁石の違い
<コンパスと吸い付く力>
「磁石」の主な性質は「南北の方位を示すコンパスの役目をする」ことと「鉄板に吸い付く、鉄板を吸い寄せる」ことです。
私たちは「磁石」、「永久磁石」、「マグネット」という言葉から、どのような性質、特徴を想像するでしょうか。多分、一つは、「磁石の針は南北の方位を示す」ということでしょう。つまり、磁石といえば「方位磁石」、「コンパス」と呼んで、大昔からその場所での地球の南と北の方角を示して、自分の位置や進む方向を教えてくれる重要な道具であるということがすぐ頭に浮かびます。
もう一つは「鉄板に近づけると吸い付く、吸い寄せる力がある」ということも、すぐわかりますね。ところが、この二つの性質は別々のようで、実は磁石の性質としては同じことをあらわしているのです。
<磁石と地球のN極・S極>
磁石の説明には、必ずN極とS極が出てきます。棒状の磁石にしても、円板の磁石にしても、一方の端や面を「N極」、もう一方の端や面を「S極」と呼んでいます。この理由は、磁石を細長くして、何らかの方法で浮かせると、N極が地球の北(North)を、S極が地球の南(South)を向くからです。ただし、よく間違えますので気を付けてください。地球は大きな磁石ですが、磁石のN極が向く北極は地球のS極で、磁石のS極が向く南極は地球のN極です。
方位磁石(コンパス) | 磁石と地球のN極・S極 |
<引き合う力と反発する力>
磁石のよく知られている性質は、「違う極同士だとくっつき、同じ極同士だと反発する」というもの。 これは、「磁力線」が持つ、磁力の流れが原因です。 同じ磁力の流れを作れれば結合し、そうでなければ互いに離れようとしてしまいます。
磁石の引き合う力と反発する力
<磁石の中はどうなっているのか>
磁石の中に「磁気双極子(じきそうきょくし)」と呼ばれるN極とS極がセットの小さい磁石がびっしり詰まっています。図ではびっしり詰まっているようには見えませんが、実際には物凄く小さい磁極(原子レベルの小さい磁石)がまんべんなくびっしり詰まっているイメージです。
磁石の中は小さな磁石が満杯
<磁石を切断するとどうなるか>
次図で見て頂ければ分るとおり金太郎飴のようにどこで切っても右側の断面はN極、左側の断面はS極となってしまうので、切った瞬間にはもうN極とS極を持つ磁石となってしまいます。したがって、磁石は、何回切っても同じようにN極とS極を持つ磁石になります。
磁石を何回切ってもN極・S極を持つ磁石に分かれる
<磁石が鉄に吸い付く理由>
鉄の中には原子レベルの大きさで、小さな磁石が詰まっています。ただし、磁石になっていない普通の鉄はこの小さな磁石の向きがバラバラですが、外部の磁石により「磁化」した鉄は図のように小さな磁石が同じ方向を向いてきて、やがて、全体が磁石になり、磁石と引き合うようになります。
<単極だけの磁石は見つかっていない>
NとS極を分けられないかと大昔から色々と実験されてきましたが、未だにN極とS極を分けることは出来ていません。どこで切断しても必ずN極とS極がセットになってしまいます。
例えば、電気の元である「電荷(でんか)」であれば正電荷と負電荷で分けることができるのに、磁気の元である「磁荷(じか)」はN極とS極で分けることが出来ません。なぜ分ける事が出来ないのか、なぜ「単極(モノポール)」にできないのかはいまだに解明されていません。
わかっているのは、前項でお話をしましたように、磁石を2つに割っても100個に割っても粉々に砕いても、割った瞬間からN極とS極の磁極を持つと言う事です。