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北の空で輝く北極星

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<北極星とは>

前回の「地磁気と方位磁石」の中で、地球の真北の方向を示す北極星についてふれてみました。磁石の話からはそれますが、北極星についてもう少し詳しく調べてみましょう。

北極星は名前から想像できる通り、「天の北極に一番近い、輝く恒星(こうせい)」を指します。天の北極は、地球の自転軸を北の方角にのばしたときに天球と交わる場所のことです。南半球からは北極星を観測できず、北半球でのみ見られます。

常時、真北の位置でほぼ動かない見えるため、古代から方角を確認するのに役立っていました。現在も、天体観測において北極星は重要な役割を果たしています。

 

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北の夜空と天体の動き

 

<地球と星の動き>

地球は北極と南極を貫く回転軸(地軸)を中心に、コマのようにグルグル回っています。そのため地球の外にある天体は、あたかも動いているように見えるのです。

たとえば日本で北の空を見上げると、さまざまな天体が反時計回りにグルグルと回っていることがわかります。近くにある天体も、遠くにある天体も、明るい天体も、暗い天体も、どれも反時計回りに回っているのです。この理由は、地軸を南から北に見ると、地球は時計回りに自転しているからです。

南側の天体は東からのぼり、南を通って西にしずむ、つまり時計回りという動きを繰り返します。これは、地軸を北から南に見ると、地球の自転は反時計回りになるからです。

次の図のような「天球」をイメージすると、天体の動きを理解しやすいでしょう。天球とは、地球を中心として描いた、仮想の球面のことです。「地球以外の天体は全て天球上にある」と仮定し、地球は中心で静止していて、地球以外の星が回転しているとする概念モデルです。地球上の観測者から見える天体の位置や動きを表すために使います。

 

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地球と天球

 

<星の日周運動>

星の1日における運動を「日周運動(にっしゅううんどう)」といいます。日周運動の見え方は、地球上の緯度によって異なります。日本のように、北半球の中緯度にある地域では、天体は東の地平線から出て南の空を通り、西の地平線に沈んでいきます。また、天の北極近くの星(周極星)は地平面下に沈むことなく円を描きます。

 

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日本付近から見た天体の円周運動

 

天球の半分は地平面より北または南にあるため、観測者からは見えません。観測者が一度に見えるのは、北半球では地平面より北、南半球では南の半分だけとなることも覚えておきましょう。

天球の分かりやすい例が、プラネタリウムです。プラネタリウムは半球状になっていて、内側のスクリーンに星を映すことで、地上から見た星空を再現しています。

 

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日本付近の天球の見え方と日周運動

 

<星の年周運動>

季節によって、星の見える位置が変わります。毎日同じ時間に同じ星を観測すると、見える位置が東から西へ少しずつずれていき、約1年で元に戻ります。これは、地球が太陽の周りを公転しているために起こる天体の見かけの動きで、星の「年周運動(ねんしゅううんどう)」といいます。

地球の公転周期は365日です。そのため、星の位置は1日に約1度、1カ月で約30度ずつ移動します。たとえば、オリオン座は次図のように、秋の真夜中 → 東の空、冬の真夜中 → 南の空、春の真夜中 → 西の空、に見えます。これは言いかえると「オリオン座は3ヶ月で90°移動している」ことになり、「星座は地球の公転により、1ヶ月で30°移動する」ということがいえます。

 

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オリオン座の年周運動

 

<北極星は恒星ポラリス>

北極星は正式な名称ではなく、現在の北極星は「ポラリス」という名前の恒星です。「“現在の”ということは、昔は名前が違ったの?」「これから変わる可能性もあるの?」と疑問が生まれるかもしれませんが、まさにその通りです。北極星は時代によって変わります。10年や100年という単位では変わりませんが、何千年、何万年という単位になると、実は回転軸の延長線上にくる星が変わります。

たとえば、先代の北極星は「コカブ」という恒星だったのですが、現在の北極星は恒星「ポラリス」です。次代の北極星は恒星「エライ」になりそうです。エライに変わるのは西暦4000年ごろ、今から約2000年後と言われています。2000年後の地球に住んでいる人たちは、私たちが呼んでいる星とは違う星を「北極星」と呼んでいることでしょう。

 

<北極星は動かない>

ほかの天体は日周運動でグルグル回っているのに、北極星だけが動かない理由は、実はかなりシンプルです。それは地球の回転軸の延長線上に、北極星がたまたま存在しているからです。

遊園地のメリーゴーランドに乗っている場面を想像してみてください。横を見ると、外の景色は飛ぶように流れていきますよね。ところが真上を見ると、ほぼ同じ景色のままです。これと同じく、北極星は回転の中心にあるので動いていない(日周運動をしない)ように見えるのです。

 

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地球が自転しても見え方は変わらない 地球が公転しても見え方は変わらない

 

地球は、太陽のまわりを約1年かけて回っています。そして地球と太陽は1億5000万kmも離れているので、地球の公転によって、地球は宇宙を大きく“移動”しています。

たとえば、夏の地球と冬の地球ではその位置は3億kmも違うと言われますが、「地球が移動すれば、北極の真上にくる星も変わるのでは?」と疑問が浮かんできますよね。前項のオリオン座のように、夏と冬では年周運動のため、見える方角が変わってくるように思えます。

しかし、地球から北極星(ポラリス)までの距離は、なんと431光年……。光はとてつもなく速く進みますが、その光でさえ届くまでに431年かかる距離、と言えばスゴさが伝わるでしょうか。ですから、地球の公転距離の3億kmもちっぽけな距離になってしまいます。北極星はこれほど遠くにある天体なので、夏の地球、そして冬の地球から見ても、北極星は年周運動をせず、もはや同じ方角にあるように見えるというわけです。

 

<北極星が見える高度>

北極星は、北極の真上にある天体です。ということは、もちろん南半球からは北極星を見ることはできません。そして、見る場所によって北極星の高度は異なります。

北極に立っている人には、北極星は自分の真上に見えます。一方で赤道上に立っている人には、北極星は自分の真横に見えます。実際には地平線の方向に位置するので、ほぼ見えませんが……。

では、東京はどうでしょうか? 東京は赤道から36度ほど北に位置する都市です。そのため、地平線から36度の高さに北極星を見ることができます。「北極星の高度=北緯の度数」と覚えておくと良いでしょう。

 

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地球上の場所によって北極星が見える高度は異なる

 

<北極星をみつける>

北極星は、天の北極に一番近い星です。地球上から見ると常に真北にあって、ほとんど動きません。そのため北極星を天の北極とみなして、周囲の星を観測すれば、北の空の日周運動を理解しやすくなります。北極星は、ある星座を使うと簡単に発見できます。

春夏は「北斗七星」、秋冬は「カシオペア座」を目印に、下図のように北極星を特定しましょう。

1~2時間後にもう一度北の空を見ると、北斗七星あるいはカシオペア座が、北極星を中心に反時計回りに移動しているのが分かります。星が見られるのは主に夜なので、あまり遅くならないよう、早めの時間帯を狙って観測しましょう。

(1)北斗七星を見つける

北斗七星は「ヒシャク」の形をした星座です。形を覚えてしまえば、すぐに見つけることができるでしょう。

(2)ヒシャクの先端を見つける

北斗七星を構成する7つの星のうち、ヒシャクの先端部分のふたつの星を見つけます。そして、それぞれの星を線で結びます。

(3)先端の長さを5倍する

それぞれの星を結んだ線をひとつとして、それを5倍分のばしたところに明るい星が見えてきます。この星が、北極星です。

 

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北極星の見つけ方

 

春、夏の北斗七星は「ヒシャク」の形をした星座です。形を覚えてしまえば、すぐに見つけることができるでしょう。秋、冬は、カシオペヤ座からも同じようにして、北極星を見つけることができます。

 

<南極星はない>

北極の真上にある星が動かないなら、南極の真上にある「南極星」も動きません。しかし、そもそも南極星という言葉を聞きませんよね。その理由は、南極の真上にある星は肉眼では見えないからです。宇宙には無数の星が存在するので南極の真上にも星はありますが、人の目で見ることができるほど明るくないため、「南極星は存在しない」と言われることが多いのです。そのため、昔から南半球に住んでいる人々、または南半球の目的地を目指す人々は、直接、南の方角の目印となる星がないため、それほど明るくはない「南十字星」を利用してきました。

 

以上で、“北の空で輝く北極星”の章は終了です。