<神秘的なオーロラ>
オーロラの現象そのものは紀元前から様々な地で確認・記録されています。アリストテレスやセネカはオーロラを天が裂けたところであると考えていました。特にアリストテレスは「気象論」で「天の割れ目(CHASMATIS)」と表現しました。また、日本では古くは「赤気」、「紅気」などと表現されていました。現代日本語では北極近辺のオーロラを「北極光」、南極近辺のオーロラを「南極光」と呼ぶこともあります。
神秘的なオーロラ現象
北欧神話においてオーロラは、夜空を駆けるワルキューレ(戦死者を選ぶ女神)たちの甲冑の輝きだとされています。北欧ではオーロラにより死者の世界と生者の世界が結びついている、と信じている人が未だにいます。またエスキモーの伝説では、生前の行いが良かった人は死後、オーロラの国(実質的に天国)へ旅立つと言われています。
<天変地異を予言>
地球の極地に浮かび上がるオーロラは、前述のように昔から神秘的な現象であり、太陽の日食などと同様に天変地異、不吉な出来事を予言するものと考えられた時代もありました。
中国や欧州ではオーロラの活動が活発な時にオーロラの上の部分、赤い部分が見えるときがあります。このことから中世ヨーロッパではオーロラの赤色から血液を連想し、「災害や戦争の前触れ」、あるいは「神の怒り」であると解釈していました。また中世までのヨーロッパでは、オーロラを「空に剣や長槍が現れ」戦ったとしています。これはオーロラの縦縞が激しく動くさまを表しています。
古代中国ではオーロラは天に住む「赤い龍」に見立てられ、やはりヨーロッパと同様に政治の大変革や不吉なことの前触れであると信じられていました。古代中国には赤い蛇のような体を持ち、体長が千里におよぶとされる「燭陰(しょくいん)」という神が信じられていて、中国の神話学者・何新は、大地の最北極に住む燭陰はオーロラが神格化されたものではないかと論証しています。その一方で中国の考古学者・徐明龍は、燭陰を、中国神話の神である「祝融(しゅくゆう)」と同一神であるとし、太陽神、火神ではないかと述べています。また中国の古文書の中で「天狗」「帰邪」「赤気」「白気」「竜」などと表現されている天文現象の中にも、オーロラのことを指しているのではないかと推測されるものがあります。
<オーロラ・名称の由来>
オーロラという名称はローマ神話の「暁の女神アウロラ(Aurora)」に由来します。オーロラという名称が使用され始めたのは17世紀頃からと考えられています。名付け親は一説によるとフランスの哲学者ピエール・ガッサンディで、英国の天文学者エドモンド・ハレーが自らの論文の中でこの説を述べています。もう一説は、イタリアのガリレオ・ガリレイが名付けたという説です。当時ガリレオは宗教裁判による命令で天体に関することを書けなかったため、弟子の名を使ってこのことを著しています。
それでは、この水素はどこからきたものでしょうか。実は、地球がマグマオーシャンになっていた時期に、水や氷を含んだ大量の小惑星や隕石がマグマオーシャンに降り注ぎ、その水や氷の一部はのちの海洋となりましたが、大部分(90%以上)は高温高圧化の元で、金属鉄と反応して「金属水素化物(水素化鉄:FeH)」となって、金属鉄とともにコアを形成してゆきました。また、冷えたマントルにも水や水素が残されました。宇宙からの水の量は、降り注いだ隕石の推定総量と水の含有量から計算されます。
オーロラという名称が浸透する以前から、現象そのものは紀元前から様々な地で確認・記録されています。アリストテレスやセネカはオーロラを天が裂けたところであると考えていました。特にアリストテレスは「気象論」で「天の割れ目(CHASMATIS)」と表現しました。また、日本では古くは「赤気」「紅気」などと表現されていました。現代日本語では北極近辺のオーロラを「北極光」、南極近辺のオーロラを「南極光」と呼ぶこともあります。
北アメリカやスカンジナビアではオーロラのことを「northern lights」(デンマーク語:ノルウェー語: nordlys、スウェーデン語: norrsken)と呼びますが、「aurora」も使うようになって来ています。
また北極光をnorthern lights、あるいはAurora Borealis(北のオーロラ)、南極光をsouthern lights(南の光)、 あるいはAurora Australis(南のオーロラ)と呼びます。
フィンランド語ではrevontulet(狐の火)と呼ばれます。サーミの伝説では狐が北極圏の丘を走るとき、尻尾が雪原に放った火花が巻き上がり、夜空の光になるとのことからこう名付けられました。
暁の女神アウロラ(フランス:ジャン・オノレ・フラゴナール作)
<オーロラの現象と原因>
オーロラは、簡単に言うと太陽から飛んできた電気を帯びた粒子(プラズマ)が上空の大気と衝突した時に引き起こされる放電現象のことです。上空は、下から「対流圏・成層圏・中間圏・電離圏」という4つの領域に分類され、大気中の組成はそれぞれの高度で異なります。オーロラが見えるのは高度80km~600km程の電離圏という領域(スペースシャトルや国際宇宙ステーションがいる高度くらい)で、電離圏には主に窒素分子(N2)、酸素分子(O2)、酸素原子(O)などが存在しています。
高度80~600kmの電離圏で見られるオーロラ(国立極地研究所)
太陽で、フレアや CME(コロナ質量放出)などのエネルギー放出現象が起こると、太陽風に乗ってプラズマが地球まで運ばれ、大気圏に突入します。このプラズマが電離圏に存在する窒素分子、酸素分子・酸素原子などと衝突して発光したものがオーロラです。だから電離圏で見えるというわけです。つまり、オーロラができるには「太陽風プラズマと大気の衝突」が必要ということです。
太陽風プラズマと大気の衝突(九州大学付属図書館)
<オーロラオーバル>
それでは皆さん、オーロラはどこでみることができるかご存じでしょうか? フィンランド、カナダ、ノルウェーなどを思い浮かべた人が多いのではないでしょうか?
オーロラはフィンランド、カナダ、ノルウェー、アイスランドなど地球の極地(緯度60度~70度)の限られた地域で頻繁に発生します。特に、オーロラが見える領域のことを「オーロラオーバル」と呼んでいます。
オーロラがみえる地域・オーロラオーバル(九州大学付属図書館)
<磁気バリアへの太陽風の侵入>
それではなぜオーロラは世界中でみることができないのでしょうか?
「太陽風は地球全体に当たるのだから、オーロラは地球全体で見えるはず」だと思いますね。しかし、実際オーロラをよく観測するのは、北欧、カナダの北部、アラスカなど極域を取り囲むベルト状のエリア(オーロラオーバル)に限られます。なぜ「オーロラオーバル」で頻繁にオーロラが見られるのでしょう?
地球の磁気バリアを突破して侵入した太陽風(weathernews)
地球の周りには、“磁気圏”と呼ばれる地球磁場のバリアがあります。このバリアがあると、プラズマは地球表面に到達することができません。ただし、この磁気圏も太陽風の影響全てを防ぐことができるというわけではないのです。
プラズマは、以下の2つの経路で地球に到達します。
[1]磁気圏にぶつかった太陽風の一部は、進路を変えて南や北に向かい、極域の隙間から地球に侵入する。(図の「一部の太陽風が侵入(昼側の侵入経路)」の部分)
[2]一部の太陽風のエネルギーは地球の夜側にある、磁気圏尾部という領域に蓄えられ、夜側から地球にエネルギーを運ぶ。(図の「地球を回り込んだ太陽風(夜側の侵入経路)」の部分)
この2つは地球磁場(地磁気)の抵抗を最も受けにくい経路であり、極域(磁極付近)のみにプラズマが侵入し、限られた領域でオーロラが観測されるというわけです。
図を見ると北だけでなく、南にも太陽風が到達していることがわかります。したがって、オーロラは北だけでなく、南でも同じように発生しています。しかし、あまりそのような話を聞かないのは、南のオーロラオーバル付近に陸地があまりなく、地上から観測されていないからです。