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地球磁場とオーロラ(2)

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<オーロラの高度と色>

光の色は波長によって決まることは、みなさんご存じだと思います。光の波長は励起状態と基底状態のエネルギーの差の大きさで決まります。太陽風にはプラズマという陽子や電子が含まれていて、それが大気中の原子や分子に衝突することで「励起」が起こります。励起とは分子や原子が外部からのエネルギーによって初め(基底状態)よりエネルギーが高くなることを言います。励起状態は不安定であるため、すぐ基底状態に戻ります。その際に光としてエネルギーが放出されるのです。その光がオーロラの実態です。オーロラの場合、高度によって色が変わります。高度が高いと大気の密度が薄くなり、プラズマと大気中の原子が衝突しないためオーロラは発生しません。

プラズマのエネルギーが弱いと低い高度まで行く前に、衝突して酸素原子が赤く発光します。励起状態から基底状態に戻る時間が長く、大気密度が高いと発光する前に衝突が起きてしまいます。そのため、赤いオーロラはなかなか見ることができません。

 

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オーロラの発光色の変化(TELSTAR)

 

プラズマのエネルギーが強くなるとより低い高度までプラズマが到達し、緑のオーロラが見られます。緑はオーロラの中でも1番多く見られる色です。同じく酸素原子が発光しますが、窒素原子の発光も含まれる場合があります。エネルギーが大きいためより強く励起し、緑色に発光します。

さらに高度が下がると、酸素原子よりも窒素原子の方が多くなるため、窒素原子がピンクや紫に発光します。窒素原子を多く含む高度までプラズマが届くためには多くのエネルギーが必要なのでこちらもあまり多くは見られません。

 

<日本でも見えるオーロラ>

オーロラといえば、南極や北極、北米や北欧といった一部の国と地域でしか観測できない非常に貴重な現象の1つです。その絶景を一目見ようと、遠く離れた国からわざわざ観測可能な地域へと訪れる観光客も多くいます。そんな神秘的なオーロラ、実は日本国内でも観測できることをご存知でしょうか?意外と知られていない日本から観測できるオーロラについて紹介します。

次の写真は、つい最近の2024年8月12日深夜~13日未明に北海道で撮影されたオーロラの写真です。ぼんやり赤く光っているのがオーロラです。一般的なオーロラは、極点に近い高緯度地域で観測されるものです。一方、日本国内で観測可能なオーロラは「低緯度オーロラ」と呼ばれています。低緯度オーロラとは、その名の通り低緯度地域からでも観測可能なオーロラのことです。基本的なメカニズムは、高緯度地域で発生するオーロラと同様です。

 

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北海道で観測された低緯度オーロラ(ウェザーニュース2024.08.15)

 

太陽からやってきた太陽風によって「磁気嵐」と呼ばれる大きな磁場の乱れが起こると、通常のオーロラよりも 一層大規模なオーロラが発生し、結果として高緯度地域のオーロラが日本のような低緯度地域からも観測できるようになると考えられています。そして一般的なオーロラとの大きな違いは、その色が赤いという点です。

 

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通常レベルのオーロラ現象(auroranavi) 磁気嵐時のオーロラ現象(auroranavi)

 

オーロラは高度に応じて色が変わり、高度が80kmは紫やピンク、高度100kmは緑、高度200kmは赤く発色します。低緯度地域から観測可能なのは、オーロラの中でも高度200km以上の赤色の部分だけというわけですね。なぜ高度で色が変わるかについては、前項<オーロラの高度と色>をご照ください。

 

<歴史文献から探る日本のオーロラ>

日本で観測される低緯度オーロラは、過去の文献からも確認できます。次の写真は、 江戸時代、京都・東羽倉家の日記から発見されたオーロラの絵図です。

 

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江戸時代・京都に出現したオーロラ(Space Weather 15:1314)

 

過去の研究では、この日記の記述をもとに京都からオーロラがどう見えるかをシミュレーションしたところ、この絵図と同じ形を再現することができたと報告されています。

この他にも、オーロラは様々な形で日本の歴史に登場します。オーロラは古くは、「赤気」と呼ばれ、日本書紀の推古天皇(620年)や天武天皇(682年)の時代から江戸時代に至るまで、京都や江戸などで北の空が赤く光る現象が報告されています。

現代になってからも、北海道などで北の空が赤くなる現象が報告されており、山火事と間違えられて消防車が出動したりしています。このような目に見えるオーロラが見える確率は、 北海道付近では11年に1度くらいとされています。これは「太陽活動が11年周期である」ことと関係しており、太陽活動が活発な時ほど起こりやすくなります。

 

<太陽フレアとその影響>

太陽面の黒点の周辺で突然明るく光る現象があり、これを「太陽フレア」と呼びます。 太陽フレアは太陽系最大の爆発現象で、爆発に伴って太陽大気のガス(プラズマ)や人体に有害な高エネルギーの粒子、 大量の放射線(X線など)が発生します。大きさは1万~10万km、水爆の10万~1億個分の規模に匹敵しますが、 まだその発生メカニズムは1世紀以上謎に包まれています。太陽フレアは、磁場が強い「黒点領域」で発生することが多く、蓄えられた黒点磁場の歪みエネルギーを開放します。黒点の磁場構造が複雑な場合にも大規模なフレアが起きやすいことが知られています。

1989年3月13日、太陽フレアの影響でカナダのケベック州では電力系が全て停止し、停電が9時間も続きました。その影響で600万人が被害を受けたと言われています。太陽フレアが起こると、電磁波やプラズマが地球まで届くことで、地球の磁場が変動し、「磁気嵐」が発生します。磁気嵐は、地球の電離圏や、それよりもちょっと外側の磁気圏に電流が流れることによって生じます。大きなものになると、 送電線やパイプラインに誘導電流が流れ、発電所の金属パイプを腐食させるなど様々な問題が発生します。

 

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太陽の構造と温度(国立天文台) 近年最強の太陽フレア(2024.05.14 CNN)

 

オーロラが非常に明るく見える状態というのは、極域で強い電流が流れている状態を表しています。オーロラだけを見ていると非常にきれいでいいなと思いますが、宇宙環境としては荒れているわけです。特に地磁気の乱れが非常に大きくなって、日本の北海道でもオーロラが見えるような状態になると、かなり大きな磁気嵐が起こっていることを示しています。

この他にも、 太陽からの高エネルギー粒子やX線、太陽風によって、人工衛星が故障したり、衛星による測位(GPS)に誤差が出たり、通信障害が起こったり様々な被害が引き起こされます。

宇宙空間の利用や、通信環境の整備が進む現代では、この被害を防ごうと、太陽の活動やオーロラの出現などを予測する「宇宙天気予報」の研究も進められています。

 

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