希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

ネオジム磁石のすべて(3)<製造工程-2>

文字の大きさ :

現在、最も磁力が強く、最も数多く生産されている「ネオジム磁石」は、粉末冶金法で製造される「焼結磁石」がほとんどです。粉末冶金とは、金属の粉末を「金型」に入れて圧縮して固め、高温で焼き固めて(焼結して)、精度と密度の高い部品をつくる技術のことです。Powder Metallurgy(パウダー・メタラジー)、略してPMと表記されます。

ネオジム磁石の製造には、この粉末冶金法に加えて、「磁場中成形」という独特の成形技術、高度の焼結・熱処理技術が必要になります。以下、前回の<製造工程-1>に続き、<製造工程-2>として、成形工程および焼結・熱処理工程について詳しく解説いたします。

 

<ネオジム磁石の成形工程>

◆ 磁場中成形法

前回、異方性磁石と等方性磁石の説明をしましたが、ネオジム磁石のほとんどは「異方性磁石」であり、一つの軸方向だけに容易に磁化し、且つその方向だけが強く磁化する磁石になります。

異方性磁石にするためには、粉砕工程で作られた合金粉砕粉の一つ一つを一定方向に整列させて圧縮成形する必要があります。そのために、一般的には磁場中成形という成形方法が使われます。

微粉砕された材料粉は酸化を防ぐ容器で運搬されて、磁場成形機にセットされます。磁場成形の方法は大きく分けて二種類あります。一つは圧縮方向と磁場方向が直交している「直交磁場成形法」でありもう一つは圧縮方向と磁場方向が平行な「平行磁場成形法」です。

 

磁石のお話-画像image120007

磁石のお話-画像image120008

直交磁場成形(横磁場成形) 平行磁場成形(縦磁場成形)

 

この図は磁場成形機の磁場を発生するコイルと金型付近だけを模型的に示した図になりますが、実際の成形機はそのほか頑丈なフレームや油圧システムなどで構成されています。

 

直交磁場成形法は結晶が並ぶ方向が圧縮方向に対して直交していますので、磁場方向に結晶が並びやすく、結晶が並んでいる割合をあらわす「配向度」が大きくなり、高性能磁石となり易い方法です。ただし、実製品に近い形状を成形するには制限が多く、また多数個取り成形には不向きです。一般的には、この成型方法は高性能磁石のための大きなブロックを成形することが多いようです。

 

一方、平行磁場成形法は結晶が並ぶ方向が圧縮方向に対して平行ですので、圧縮方向と同じ磁場方向に向いた結晶が圧縮による摩擦で方向が乱れやすく、「配向度」が少し低下する傾向になります。ただし、円柱型やリング型、セグメント型などの磁石は金型により成形しやすく、さらに多数個取り成形も可能ですので、実製品に近い形状の大量成形に向いています。

 

◆ CIP/RIP

直交磁場成形法で成形されたような大きな成形ブロックは、大きな成形圧力が必要なため、成形機によっては成形密度が不足している場合があります。そのような場合は、次図のように、再度圧縮成形を加えます。この成形工程では磁場は加えません。

左の図は「CIP(Cold Isostatic Pressing)法」といって、ゴム型や真空包装された成形体ブロックを油のなかで四方八方から圧縮する「冷間静水圧成形」で圧縮して密度を高くします。

右の図は「RIP(Rubber Isostatic Pressing)法」といって、大きなゴム型の中に成形体を入れて、直接ゴム型を圧縮成形して、静水圧成形と同様な効果を得る方法です。

 

磁石のお話-画像image120009

磁石のお話-画像image120010

CIP(静水圧成形) RIP(ラバー静水圧成形)

 

<ネオジム磁石の焼結・熱処理工程>

◆ 焼結・熱処理工程の目的

焼結工程では、成形体の密度を100%近くするために約1100℃で焼き固めます。その後焼結温度より低い温度で複雑な熱処理を行い、焼結体の結晶組織を適正な組織に制御します。この工程の焼結炉、熱処理炉は真空や真空にアルゴンガスなどの不活性ガスを一部混ぜた「雰囲気」を使います。

 

磁石のお話-画像120011

焼結工程によって成形体の密度上昇

 

◆ ネオジム焼結炉・熱処理炉

次の写真左はロットごとに装置を開け閉めして作業する「バッチ式焼結炉」「バッチ式熱処理炉」です。右の画像は製品を載せた台を炉の中で連続して移動させ処理する「連続式焼結炉」「連続式熱処理炉」です。

バッチ式は少量多品種の磁石生産に向いていますが、生産効率はあまり良くありません。連続式は大量の製品を処理することができ、効率が良いのですが、連続稼働が基本で且つ常時炉内を加熱しておかなければならないため少量生産には向いていません。

 

磁石のお話-画像image120012

磁石のお話-画像image120013

バッチ式真空・雰囲気焼結炉 連続式真空・雰囲気焼結炉

 

◆ ネオジム磁石の代表的な焼結・熱処理パターン

次の左図はネオジム磁石の代表的な「焼結・熱処理パターン」です。バッチ式の炉であれば、炉室内の温度をこのようにプログラム制御させます。また、連続式の炉であれば、成型後の製品を各温度に設定された複数の炉室の中を自動で移動させることになります。焼結体を「顕微鏡写真」で観察しますと、右のような写真になります。ごらんのように、ネオジム磁石の焼結体は多くの「結晶粒」の集合であることがわかります。

 

磁石のお話-画像image120014

磁石のお話-画像image120015

ネオジム磁石の焼結・熱処理パターン例 ネオジム磁石焼結体の顕微鏡写真

 

以上、ネオジム磁石の成形工程、焼結・熱処理工程でした。