MRI(Magnetic Resonance Imaging)、磁気共鳴断層撮影装置
「磁場中の原子が固有の周波数の電磁波と相互作用(共鳴)する現象NMRを利用した、生体の断層撮影装置。」
X線CTの実用化が開始されてからしばらくして、MRIが登場してきた。当初はNMR-CT (核磁気共鳴影像法)と呼ばれていたが、「核」という言葉には日本人はアレルギーがあるので 近年はMRIが一般的な呼称となっている。MRIでは生体の水分子や脂肪分子の中の水素原子の核磁気共鳴現象を利用して測定する。永久磁石の磁力は主に電子のスピン磁気モーメントに関係しているが、MRIは原子核の核磁気モーメントを利用する。
水や脂肪の水素原子に外部から強い磁界をかけると核磁気モーメントのエネルギー状態はいくつかに分かれ、このとき64MHzの電磁波を加えると、電磁波のエネルギーが水素原子だけに吸収され、エネルギー状態が高いほうへ励起する。この状態が核磁気共鳴であるが、この状態は不安定で、まもなく水素原子の周囲に振動する磁場(電磁波)を発生させながら減衰して元のエネルギー状態に戻る。この元に戻るまでの時間(緩和時間)が組織やその状態、例えば正常細胞と癌細胞によって異なるので、その情報をコンピュータによって画像化する。つまり、水分子や脂肪分子の分布を輪切り状態で体内の深部まで調べることができるわけである。原子核に磁気共鳴を起こさせるには、極めて強力で且つ均一な磁界が必要である。このため、製品化当初のMRIには全て電磁石として超伝導磁石が利用されていたが、その後ネオジム磁石の出現で、永久磁石タイプの小型MRIも普及している。