HDDR(Hydrogenation Decomposition Desorption Recombination)
「HDDR法とは, Nd-Fe-B系磁石において用いられている製法であり,水素の吸収・放出反応によって結晶粒を微細化し,高保磁力粉末を得る方法である。」
下図に示したようにNd2Fe14B化合物は700〜900°Cの水素中熱処理(Hydrogenation)によりNdH2, Fe2B, Feの3相に分解する不均化反応を生じる(DecompositionまたはDisproportionation)。この分解温度域において熱処理雰囲気を水素から真空に切り換え強制的に脱水素すると, NdH2から水素が放出(Desorption)され,それと同時に再結合反応(Recombination)が生じてサブミクロンオーダーのNd2Fe14B化合物相が形成する。
HDDR法はメルトスパン法以外で唯一工業化が可能な方法として位置づけられ,特にメルトスパン法では低コストでの作製が困難とされている異方性磁石粉末の作製が可能であることから,高性能ボンド磁石用粉末の作製方法として期待されている。従来,異方性粉末の作製にはCo,Ga, Zrなどの添加元素が必要であると報告されていたが,HDDRが生じる水素圧と温度の関係を熱力学的に求め,これに基づいた熱処理方法をにより3元系合金でも異方性粉末の作製に成功した報告がある。他の研究でも同様の熱処理方法によってCoを含まなくても異方性化か可能であること,高い(BH)maxを有する磁石粉末が得られることなどが報告され, HDDR粉末も量産化されるようになってきている。