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磁石・磁気の用語辞典(用語解説)
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【Magnetic Wall】

磁区(Magnetic Domain)、磁壁(Magnetic Wall)

「磁区は磁壁によって囲まれた磁化が平行にそろっている領域で、磁壁は隣接する磁区間に存在する境界領域のこと。」

20世紀初頭は原子物理学の急速な進歩と共に、磁性科学の飛躍的な発展があった。一方、原子レベルの量子力学的な理論解明だけでは現実的な実用材料の進歩に結びつかない。そこで大きな貢献を果たしたのが磁区という目に見えるミニ磁石の構造の解明だった。

1907年ワイスの分子磁界の仮説で、磁壁によって囲まれた自発磁化の向きが揃った領域、すなわち磁区の存在が予言されていたが、1919年ドイツのハインリッヒ・バルクハウゼンが実験により、磁区の存在を音で初めて確認した。この実験は強磁性体のコアにコイルを巻き、磁石を近づけると流れる電流をスピーカーで聞くというもので、強磁性体がスームーズに磁化されない様子が“ザーザー”というノイズになったものである。この現象を現在も“バルクハウゼン効果”と呼んでいる。この音は磁区内の磁化が反転する際の“磁壁移動”の現象を検知していたのである。その後、磁区についての研究は急速に進展して行った。

 磁区は磁性材料の中で立体的な組合せをして存在し、1つの磁区の内部は同じ向きの“自発磁化(磁気モーメント)”が並んでいる。磁区と磁区の境界は磁壁といわれているが、単に自発磁化の向きが異なっている磁区の境界に過ぎない。

その後1930年代になって、マグネタイト微粒子のコロイド液と顕微鏡による磁区観察の技術、“ビッター法”が開発され、目に見える形で磁性体の磁化過程が評価できるようになった。このように、磁区の原理が判明し、その観察が可能となったことで、近代の製鉄技術、冶金技術の進歩と相まって、高性能な磁石の開発・実用化が加速することになった。