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磁石・磁気の用語辞典(用語解説)
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【低温減磁】

不可逆減磁(Irreversible Flux Loss)、初期減磁(Initial Flux Loss)、不可逆温度変化熱減磁高温減磁低温減磁

「永久磁石の温度を上げた後、温度が戻っても磁力が戻らないで減磁すること。」

着磁済みの磁石は周囲の温度が変化すると、熱エネルギーの関係で磁気特性が変化する。

温度が戻っても磁気特性が戻らない変化を”“不可逆減磁”と呼び、元の温度に戻ると磁気特性も同じ値に戻る変化を、“可逆減磁”と呼ぶ。温度が起因する着磁後の減磁は一般的には不可逆減磁によるもので、これには初期減磁に起因するものと経時変化に起因するものがある。代表的な不可逆減磁は、ネオジム磁石の”高温減磁(高温熱減磁)”とフェライト磁石の”低温減磁(低温熱減磁)”がある。

(1) 初期減磁による不可逆減磁

次図において、動作点がa’点の場合、ネオジム磁石、フェライト磁石は120℃、-60℃でそれぞれb’点に移行する。b’点はB-H曲線上の折れ曲りより下にあるため、温度が20℃に戻っても、動作点はa’点に戻らず、c’点に留まってしまいBは減磁する。このような減磁を初期減磁と呼び、不可逆温度変化の代表的なものである。このような減磁の度合いは、材質、磁石特性、温度係数、形状によるパーミアンス係数などの要素により異なってくる。

前記のように、初期減磁はHcjHcbの低下に起因するものが多く、ネオジム磁石の高温使用、フェライト磁石の低温使用では、Hcj、Hcbが十分大きな材質を選定するか、磁化方向の厚み寸法を大きくして(パーミアンス係数を大きくして)可逆温度変化の領域で使用する必要がある。

(2) 経時変化による不可逆減磁

着磁済みの磁石は、先に述べた初期減磁のほか、やはり熱エネルギーの関係で、時間が経つにつれ徐々に磁化が劣化する。この値は一般的には小さなものだが、時間、年数が長くなれば全ての磁石に現れる傾向である。劣化の度合は磁石の形状(パーミアンス係数)、使用温度、材質などによって変わってくる。また、錆などのような磁石の化学変化・変質や加工によるひずみの蓄積も経時変化の要因になる。磁石が小さいもの、薄いものはこの経時変化に注意が必要である。しかし、最近の磁石はめっきなどの防錆技術の進歩や経時変化への各種対策の導入により、実用的にはほとんど問題にならなくなってきている。