磁気抵抗効果(Magneto Resistive effect)、
磁気抵抗効果素子(Magneto Resistive effect Device)、
MR素子(Magneto Resistive Device)、
MRセンサー(Magneto Resistive Sensor)
「インジウム・アンチモン(InSb)などの非常に高い電子移動度を持つ半導体薄膜は、垂直方向に印加される磁束密度に応じて抵抗値が変化する。この現象を磁気抵抗効果と呼び、1883年英国のケルビンによって発見された。N極性、S極性どちらの磁界を印加しても同様に抵抗値が変化し、複数の素子を組み合わせることで、抵抗の変化を電圧の変化として取り出すことができる。このような素子、センサーを磁気抵抗効果素子、MR素子、MRセンサーという。」
下図に示すように半導体薄膜に磁界(磁束密度)を印加しなければキャリア(電子)は印加された電界によってqEという力によって半導体内を電界方向に直進 するが、磁界を印加するとローレンツ力qvBによりキャリアは進行方向を曲げられる。ここで、qは電気素量、Eは電界の強さ、vは電子の速度、Bは磁 束密度である。電子の走行距離が長くなると抵抗値が増加する。
磁気抵抗変化率△R/R0は低磁場領域(約0.4T以下)では半導体薄膜の電子移動度μと半導体薄膜に垂直に印加される磁束密度Bの積の2乗に比例し、高磁場領域(約0.4T以上)ではμとBに比例する。
RBを有磁界での抵抗、R0を無磁界の抵抗とすると、
△R/R0 = (RB-R0)/R0
低磁場領域(0.4T未満)の磁気抵抗変化率は、μを電子移動度、Bを磁束密度とすると、
△R/R0 ∝ (μxB)2
低磁場領域(0.4T以上)の磁気抵抗変化率は、
△R/R0 ∝ (μxB)
つまり、半導体中の電子移動度や磁束密度が高ければ高いほど磁気抵抗効果は大きくなる。
この様に半導体の磁気抵抗効果は材料の電子移動度μに依存する。つまり、材料の電子移動度が大きければそれだけ磁気抵抗効果も大きくなる。こ のため半導体磁気抵抗素子の材料には電子移動度の大きい3-5族化合物半導体の中で最大の電子移動度をもつInSbが用いられる。InSbは電子移動度 78,000(cm2/V・sec)と半導体中最大の電子移動度をもつので半導体磁気抵抗素子用の材料として適している。その他の半導体材料では、InAsが33,000、GaAsが8,500(cm2/V・sec)程度である。