レアメタル(Rare Metal)、希少金属
「経済産業省の使用する定義では、下図に示す47元素の金属元素をレアメタルと呼ぶケースが多くなっている。図中の17種類の希土類元素(レアアース)を1種類とカウントして31元素と数えることもある。自然界に存在する元素は約90種類であるから,その1/2以上の元素がレアメタルと呼ばれていることになる。」
レアメタルと呼ばれている元素は,おおよそ以下のような性格を持っている。
(1)将来、安定供給が困難になる可能性が、他の金属に比べて相対的に高い。
主な理由は以下のようなものである。
■資源の埋蔵量が少ない。
■埋蔵量は多くても経済的に採掘可能な品位の高い鉱石を産出する鉱床が少ない。
■埋蔵鉱量や生産量が特定の国に著しく偏在している。
(2)精錬に非常に高度な技術や大きなエネルギーが必要などの理由によって、鉱石か
らの精錬が容易ではない。
(3)何らかの工業的な利用価値がある。
(4)古くからの貴金属である金、銀はレアメタルとは呼ばれない。
(5)希土類元素は特性が似ているため、以前は分離が困難で混合物として扱われること
が多かったので、スカンジウムとイットリウムおよびランタノイドの希土類元素は
一括してレアメタルに含められている。
生産量は少ないものの、今やレアメタルは自動車やエレクトロニクスなどの基幹産業に
欠かせない金属になっている。例えばネオジムはハイブリッド自動車の 動力モータや
ハードディスクの磁性材に, コバルトは携帯電話の充電池の材料に,プラチナは自動車の
排ガス浄化装置に使われている。鉄が「産業のコメ」といわれるのに対して、レアメタル
は「産業のビタミン」とも呼ばれる。
ここ数年、レアメタルの国際市場価格が軒並み上がっている。 2002年から2010年まで
の8年間で、ニッケル、ネオジム、タングステン、プラチナなど3倍から10倍以上大幅に
価格が上昇した。新興国の台頭で、自動車や携帯電話などの生産量が急速に増えて需要
がひっ迫しているだけでなく、中国やロシア、アフリカといった資源産出国が、レアメ
タルの生産や輸出を制限したり、自国内での需要を優先する政策を取り始めたことが大
きい。
世界の産出シェアをみると、中国はレアアースの93%、タングステンの90%を占める。
また南アフリカは,プラチナの78%、クロムの43%を産出する。このように産出国が一部
に限定されると、消費国は産出国の生産計画や戦略に大きく左右される。実際に、中国は
2006年から現在までに金属原料の輸出関税を何回も引き上げ、南アフリカもレアメタルの
国際価格の上昇に合わせて課税額を増やす制度を検討している。
こうした国際情勢の中, 日本政府も産業競争力を維持する狙いから、レアメタルの安定
供給確保に乗り出している。資源外交によってレアメタルの供給源を多様化したり、電子
機器などレアメタルを含む使用済み製品のリサイクルを推進したり、レアメタルの備蓄を
増やしたり代替材料を開発する、といった取り組みがある。