【自動車に使われている永久磁石の役割と各種モータ】
現在自動車用モータに限っても、大衆車で20~40個、高級車では70~100個程度のモータが使われています。また各種磁気センサー類、カーナビ、オーディオ装置も含めると1台の車には50個~150個の永久磁石が使われていると考えて良いでしょう。
1、フェライト磁石
自動車の主力磁石であり、スタータ、発電機、ワイパ、パワーウィンド、燃料ポンプ、エアコン、ブロワー、ラジエータ冷却ポンプ、シートリクライニング・シートスライド・シートリフタ、電動パワステ、電動ミラー、ドアロック等の各種モータ、その他、オーディオ装置、カーナビ装置駆動モータ、オーディオスピーカなど、その用途は多岐に亘っています。焼結磁石がほとんどですが、一部フェライトボンド磁石(フェライトプラマグ)も燃料計、水温計に使われています。
2、希土類磁石
希土類磁石はセンサー類の用途が多いようですが、ハイブリッドカーのモータ、発電機、電動パワステ、リターダ(ブレーキアシスト)などの省エネ、環境、安全対策用途も急増しています。
センサー類にはABSの車輪速センサー、エンジン回転センサー、カム角センサー、イグニッションコイル(エンジン点火用高電圧発生装置)のバイアス磁界発生、スピードメータ、タコメータなどがあります。1990年代前半まではサマリウム・コバルト磁石が使われていましたが、ネオジム磁石の耐熱性能が大幅にアップしたため、以後ネオジム磁石が大半を占めるようになりました。但し高温度になるイグニション用磁石など、まだ一部サマリウム・コバルト磁石が残っているようです。またメータ類にはネオジムボンド磁石が使われるケースが増えています。
3、電気モータの分類
下図に、電気モータの分類を示しました。自動車にはこれらのほとんどの種類のモータが使われています。図中の“PM”はネオジム磁石を使った同期モータの総称とお考えください。
4、電気モータの構造(断面図)
上図分類の各モータの構造の概略断面図を以下に示します。
DCモータは最も利用されているモータで、ファン、ワイパー、スタータなどの主力モータであり、フェライト磁石を使った永久磁石タイプがほとんどです。同期モータには整流子、ブラシがなく、ブラシレスDCモータにも分類されます。インバータで制御され、巻線が固定子側にあるため種々の構造設計が可能で且つ堅牢であるため、その用途が拡大しています。EVやハイブリッドカーの駆動モータ、電動パワステなど、ネオジム磁石を使ったモータが増えています。
以上、自動車の永久磁石とモータについての総合的なお話をいたしましたが、次回からは、個別のモータ、センサーなどに永久磁石がどのように組み込まれているかの解説をしたいと思います。