【自動車に使われているセンサー用永久磁石の例】
3回目の今回は、自動車で永久磁石がどんな使われ方をしているか、さらに詳しくお話をしてみましょう。
1.ホイールセンサー
下図はABSに使用されているホイールセンサーです。急ブレーキをかけると車輪の回転数が急激に低下し、これをホイールセンサーが検知してコントロール回路に電気信号を送り、タイヤがロックしないようにブレーキの油圧を制御します。車軸に取付けられたギアパルサーにより、回転数に応じた磁束変化が起こり、コイルに交流電圧が誘起されます。
コイルは磁束変化を検知すれば良いので、タイヤ周りの泥やほこりがあっても磁束変化にほとんど影響が無く、外部環境に影響されない、シンプルで低コストのセンサーとなります。
2.クランク角、カム角センサー
ABSセンサーと同様な原理・機構で、エンジンの微妙な点火タイミングを制御するために、クランク角、カム角センサーが使用されています。回転するロータの歯車による磁束変化をホールセンサーで検知して、その電気信号によって点火時期を決定します。
3.車速センサー、タコメーター、スピードメーター
下図のように車速センサーは、エンジンのクランク軸または車軸の回転と共に多極着磁した磁石(等方性ネオジムボンド磁石)が回転し、非接触のMR素子で磁束の変化を電気抵抗の変化に変換します。したがって、回転速度(エンジンの回転数や車速)に比例したパルス波を取り出すことができ、ステアリング、ワイパー、クルーズコントロール、デジタルタコメーター、デジタルスピードメーターなどの制御回路にパルス信号を送ります。
なお、アナログのタコメーターやスピードメーターはさらにこのパルス信号をIC回路で電流信号に変換して、2極着磁された円柱磁石(等方性ネオジムボンド磁石)が組み込まれた交差コイルに送り込みます。二つのコイルに電流が流れると、それぞれのコイルが作り出す磁界の合成磁界の方向に磁石が回転することになり、取付けた指針が動いて、表示盤にエンジンの回転数やスピードを示すことになります。
(参考資料)
山川正光著 日刊工業新聞 「トコトンやさしい磁石の本」