【知っているようで知らないスピーカーの話】
昔から永久磁石の代表的な用途といえば、モータとスピーカーですね。NeoMag通信ではモータ関連の話は何回か掲載しましたが、スピーカーについてはまだ取り上げていませんでした。その原理についてはすでに十分お分かりになっている読者もいらっしゃると思いますが、意外と説明できない方も多いのではないでしょうか。ここで改めて、スピーカーと永久磁石の関係についておさらいをしてみましょう。
1.スピーカーの種類
電気信号を空気振動に変換する方法の違いによってスピーカーを分類すると、(1)動電型(2)静電型(コンデンサ)(3)圧電型(セラミック)(4)イオン型などになります。
このうち、永久磁石を利用する方式は動電型で、さらに動電型はダイナミック型(可動コイル型)とマグネチック型(可動鉄片型)に分かれます。但し、最近はマグネチック型が少なくなり、皆さんがお使いのスピーカーはダイナミック型がほとんどではないかと思います。なお、振動板の形状により、さらにコーン型、ドーム型、平面型、リボン型等に分かれ、また強調する音域(周波数域)によってスピーカーユニットが分類され、フルレンジ(全帯域用)、ツイーター(高音域用)、スコーカー(中音域用)、ウーファー(低音域用)、サブウーファー(超低音専用)などがあります。
2.動電型スピーカーの原理と構造
(1)フレミング左手の法則
1885年イギリスのジョン・フレミングが発表した“フレミング左手の法則”は、モータの原理を分かりやすく説明したもので、今でも理科の授業で良く使われます。ちなみに、発電機の原理は“フレミング右手の法則”になります。
スピーカーもモータと同様な原理で働き、永久磁石によって作られた磁界の中のコイルに流れる音声電流の変化がコイルを動かし、さらにコイルを巻きつけたコーンを振動させて音声を復元させているのです。一方、マイクロホンは発電機と同様で、フレミング右手の法則に従い、基本的にはスピーカーと同じ構造ですが、逆に音声(空気振動)を音声電流に変換するものです。
(2)ダイナミック型とマグネチック型
下図は内磁型のダイナミックスピーカーおよびマグネチックスピーカーの基本構造です。
ダイナミック型はコーン(振動板)に巻いたボイスコイルに音声電流を流し、直接的にコーンを振動させる方式です。図-2はダイナミック型でも内磁型といわれる磁気回路で、磁石としてはアルニコ磁石やネオジム磁石などの残留磁束密度の高い磁石を使います。図-3のマグネチック型は永久磁石の磁界にコイルの音声電流による磁界を重ね合わせ、その磁界の強弱によって鉄片を振動させ、連結したコーンを振動させます。どちらかというと、磁石の性能が低い時代に良く使われた方式です。
(3)外磁型ダイナミックスピーカー
図-4は外磁型ダイナミックスピーカーの構造図であり、リング型のフェライト磁石を使用して、薄型で且つ中型から大型スピーカーまで可能にした方式で、現在AV機器で最も多く使われているものです。円柱型磁石をボイスコイルが取り巻く内磁型に対して、外磁型ではボイスコイルを取り巻くようにリング型磁石を配置させます。フェライト磁石は比較的容易に異方性リング型磁石を製造できるので、各種AV機器のスピーカー薄型化に多いに貢献しました。
以上のように、スピーカーも永久磁石の高性能化に従って、種々の設計が可能となり、より美しい音で、より薄く、より小型なスピーカーが可能となってきたわけです。