【DCモータとACモータ】
モータには下図の分類のように、直流モータ(DCモータ・Direct-Current Motor)と交流モータ(ACモータ・Alternating-Current Motor)がありますが、どのようなモータであっても回転駆動コイルに流れる電流は絶えず変化していて、断続的な電流が流れています。したがって、DCモータといえども結果的には回転(駆動)コイルには交番電流が流れています。つまりモータは、一方向だけの電流では動かないということです。
また、DCモータとACモータの本質的な違いは、その電源の性質から来るものですが、モータではこれが重要な要素であり、その特性および特性に応じた用途が大きく異なってきます。そこで今月は、下図※印がついた永久磁石界磁式DCモータについてお話させていただきます。
1.DCモータの回転原理
(1-1)コイルに働く力
ここで方形コイルに働く力を考えると、DCモータの回転原理が分かりやすくなります。電線に流れる電流によって発生する磁界の方向は、アンペールの右ネジの法則によって決まります。したがって、永久磁石が作る磁界と電流の方向の関係は右下図のようになります。
上図の関係をコイル断面と磁力線の分布で見ると下図のようになり、方形コイルの2辺に作用する力は、磁束密度の高い方から低い方へ働きます。したがって、方形コイルの2辺には互いに逆方向の力が作用して、コイルに回転トルクが発生します。これが1回巻コイルのモータの回転原理です。
(1-2)フレミング左手の法則
フレミング(英国:1849~1945年)は磁界中の電線を流れる電流の方向、磁界の方向、電流に作用する力の方向がそれぞれ直角になることを下図のような左手の法則で簡潔に表しました。前記のようなモータの原理を見事に表現していることが分かると思います。
2.永久磁石界磁式DCモータの構造
右図はモータ内部に磁界を発生させる(界磁)方法に永久磁石を利用する“永久磁石界磁”タイプの概要図です。固定子(ステータ)界磁となり、永久磁石を使います。また、回転子(ロータ)側に電機子があり、回転する電磁石を構成しています。回転子は鉄心とコイルで構成されていて、磁界の中でコイルに電流を流すと、トルクが発生し、回転軸を中心に回転します。
さらに、この電機子を連続的に回転させるために、回転軸に整流子(コミュテータ)が取り付けられています。右下図は3スロット(3コイル)タイプの電機子の概要図です。ブラシは、固定子に取り付けられ、回転子側の整流子に接触してコイルに流れる電流を切り替える役割をしています。ブラシには、接触抵抗が小さく、磨耗が少なく、機械的な衝撃に強い特性が要求されるため、炭素や黒鉛を主成分にした材質が使われます。また、整流子には銅が利用されます。なお、コイルは電機子コイル、鉄心は電機子鉄心とも呼ばれます。
3.実際のDCモータの回転原理
1項では1回巻コイルを回転子として、モータの回転原理を考察しましたが、実用モータでは電機子のコイルや鉄心が回転することになります。
ところが、1階巻コイルや2スロット電機子ではトルクが発生しないタイミングが生じ、自立回転しません。そこで実用モータでは、少なくとも3つのコイルによって電磁石の極性を切り替えてゆく必要があります。
3スロットにすると、60°ごとに極性が切り替わり、スタートと同じ状態になります。回転する電磁石は突起が3つになるため、磁極は「N極、N極、S極」あるいは「S極、S極、N極」のように磁化され、これが整流子とブラシで切り替わってゆきます。
3つのコイルを用いた直流モータは、スタートするブラシ位置がどこにあっても、自立回転が容易になります。さらに、スロット数が多くなるほど、回転ムラも小刻みになり、次第にスムーズな回転になってゆきます。
以上、今月は永久磁石型DCモータの基本的な原理、構造について解説しましたが、次回は巻線界磁式DCモータおよびその他DCモータについてその原理、構造、特徴などについて話を進めたいと思います。
(参考資料)
「小型モータのすべてがわかる」 見城尚志、佐渡友茂、木村 玄 著 (技術評論社)
「トコトンやさしいモータの本」 谷腰 欣司 (日刊工業新聞社)
「自動車用モータ技術」 堀洋一、寺谷 達矢、正木良三 著 (日刊工業新聞社)
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