希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

モータの基礎と永久磁石シリーズ(5)

【交流で回転する同期モータ】

同期モータ(Syncronous Motor)は先月号でお話をしました誘導モータと同様、回転磁界により回転速度が決定する交流(AC)モータです。回転する原理・仕組みは誘導モータよりわかりやすく、磁石の吸引によってトルクを得るようになっています。回転速度は、電源の周波数で決まる同期速度になり、一定です。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像501

1.同期モータの基本原理

誘導モータと同様、三相交流の回転磁界を利用して回転するモータで、左下図のように外側の磁石を回転させると、内側の磁石も追随して回転する原理を利用したものです。誘導モータがうず電流と磁界の作用の複雑な原理を応用しているのに比べ、わかりやすいシンプルな原理といえます。

実際は中下図、右下図のように、外側の磁石の代わりに、三相交流の回転磁界を利用しています。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像502

上図(a)および(b)は、永久磁石でできている回転子が同期速度nsで回転している状況を表したもので、(a)は無負荷時の回転動作で、回転しているある一瞬の図といえます。コイルの回転磁界によってできたn極、s極に対して、永久磁石のN極、S極が一直線上に重なっています。このとき、モータのトルクは0です。(b)は負荷がかかったところで、回転磁界によってできたn極、s極に対して、永久磁石のN極、S極が角度δ(負荷角)だけ遅れます。

また、停止中のモータに50~60Hzの商用周波数の交流電圧を加えても、モータは回転しません。これは、先月号で解説しました誘導モータと同様、

回転磁界の回転速度(同期速度)ns = 2 x 三相交流の周波数 / コイルの極数

となり、50Hzの商用周波数の電源では、2極の回転磁界は1秒間に50回転していることになり、回転磁界の回転速度が速すぎて、慣性のある永久磁石はこの回転速度に追従できず、右方向と左方向に力を受けてしまい、停止したままになるからです。つまり、同期モータは自力で回転することのできないモータといえます。

2.同期モータの始動方法

同期速度nsまで上昇させる方法としていろいろな方法が考えられますが、ここでは、自己始動できるものと、別のモータに助けてもらう方法についてお話をいたします。

左下図は、かご形回転子と永久磁石形回転子を併設して、誘導モータとして始動できるようにしたものです。これは、小容量の同期モータで利用されています。

右下図は、容量の大きな同期モータの始動に用いられる方法です。誘導モータや直流モータを始動用のモータとして使います。始動手順としては、ます単相交流電源スイッデS1を投入して始動用モータで同期モータを回転させ、回転子が同期速度になったところで同期モータの三相交流電源スイッチS2を投入して、始動が完了します。始動後、単相交流電源スイッチS1を切って、始動モータは軸の部分を外します。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像503

3.回転子の構造と同期モータの種類

同期モータの回転子は永久磁石式だけではなく、種々のタイプのものがあり、その構造によって同期モータを分類することがあります。次図にその概要を示しました。

(a)電磁石形:電磁石(巻線/コイル)によって磁極を構成した回転子で、コイルに流れる電流(界磁電流)を調整して力率を制御できるものです。

(b)永久磁石形:永久磁石を利用した回転子で、構造が簡単で小形のモータに利用されます。

(c)リラクタンス形:回転子に磁石を使わず、鉄心だけで構成されるものです。

(d)ヒステリシス形:ヒステリシス特性を有する材質を回転子に使った構造です。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像504

4.永久磁石形同期モータ

以上述べた各種同期モータの中で永久磁石形は、ネオジム磁石による永久磁石の高性能化の背景もあり、近年ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの省エネ・高性能モータとしての実用化が促進され、急速にその技術も進展しています。

次図は永久磁石形同期モータでの、永久磁石の基本的な各種使い方の例を示しました。

図のように、永久磁石をロータに利用する方法は、

(1)磁石をロータ表面に組み込む表面磁石形(SPM:Surface Permanent Magnet)

(2)磁石をロータの鉄心内部に組み込む埋込磁石形(IPM:Interior permanent Magnet)

の2種類に大別されます。SPMは磁石の磁束密度を有効に使うことが出来ますが、高速回転のモータでは磁石が割れたり、剥がれたりする欠点があります。一方、IPMは磁石が剥がれたりする危険を減らすことができ、またリラクタンストルクを活用できるという特長を持ちます。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像505

以上、今月はACモータの中の同期モータについて一回目の解説をさせていただきました。特に永久磁石形同期モータは、家電製品、自動車の最先端モータとして激しい開発競争が繰り広げられていますので、この関連のモータについては次回も解説をさせていただく予定です。

(参考資料)

「小型モータのすべてがわかる」 見城尚志、佐渡友茂、木村 玄 著 (技術評論社)

「よくわかる最新モータ技術の基本とメカニズム」 井手 萬盛 著 (秀和システム)

「自動車用モータ技術」 堀洋一、寺谷 達矢、正木良三 著 (日刊工業新聞社)

「NeoMagホームページ」