今月も引き続き、レアメタルの用途についての解説をいたします。先月号までは主にレアメタルの“各種構造材”への用途についてお話してきましたが、今月からハイテク、機能材料分野でのレアメタルの利用について、解説させていただきます。
2.電子材料・磁性材料に使われるレアメタル(1)
下図は電子材料別に用いられるレアメタルの種類を一覧表にまとめたものです。
半導体素材は主にガリウムGaやヒ素As、インジウムInなどが使われています。電池の素材としては、二次電池にはリチウムLiやニッケルNi、燃料電池にはチタンTiやバナジウムV、クロムCrなどを用います。
磁性素材は、コバルトCo、ニッケルなどの磁性金属が欠かせません。永久磁石や磁歪材料、磁気冷却材料ではレアアースメタルとの組み合わせ、磁気記録ではほぼ単独で使われます。
超伝導材料は、大きく分けて金属系超伝導材料とセラミックス系超伝導材料があります。金属系の材料はチタン、ニオブNb、モリブデンMoを組み合わせた合金を用います。セラミックス系材料には、さまざまなレアメタルの組み合わせがあります。
このように電子材料は、さまざまな電子特性を最大限に発揮させるために、レアメタルのもつ電子的な特徴を利用します。例えば遷移金属であればd軌道電子、レアアースメタルであればf軌道電子など、特異な動きをする電子軌道を利用します。半金属素材には半導体金属そのものだけではなく、半金属を組み合わせるなどして、電子バンドのギャップを適切に操作して必要な特性を出しています。これらの材料の設計には、レアメタルのもつ科学特性の理解が必要です。
2-1.半導体に使われるレアメタル
<元素半導体>
半導体に用いる元素は、12族から16族に属します。単独で半導体になる元素は14族(4b族、VI)のケイ素SiやゲルマニウムGeで、これらを元素半導体とよびます。最も早く半導体として用いられた元素がゲルマニウムですが、現在ではゲルマニムは使われず、ケイ素(シリコン)が主役になっています。
元素半導体には、伝導電子を与えてn型半導体にする電子供与体(ドナー)に5b族(V族)のリンPが用いられ、正孔を作りp型半導体にする電子受容体(アクセプター)として3b族(III族)の元素が用いられます。
<化合物半導体>
複数の元素で作る半導体を化合物半導体とよびます。14族をはさみ、13族、III族)と15族(5b族、V族)の組み合わせでできる半導体が、III-V族化合物半導体、12族(2b族、II族)と16族(6b族、VI)の組み合わせでできる半導体がII-VI化合物半導体です。
III-V族化合物半導体は、レアメタルのガリウムGa、インジウムInが主に用いられ、電子デバイスに用いるがガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、青色ダイオードの窒素ガリウム(GaN)などの半導体だけではなく、半導体レーザーなどに用いられる組み合わせを生み出しています。II-V族化合物半導体は、ZnS、ZnSe、ZnTeおよびCdTeなどがありますが、いずれも金属間化合物で、可視光の発光素材として使われています。
<高温半導体>
半導体は一般に高温になると、電気伝導率が大となり半導体ではなくなります。その中でも、BN、BPやSiCなどは高温でも使え、このような半導体を高温半導体と呼びます。
2-2.電池に使われるレアメタル
電池は大きく分けて、化学エネルギーを電気に変換する化学電池と、物理エネルギーを電気に変換する物理電池があります。前者には、放電後再生することができない一次電池と、放電後再生することができ再び充電できる二次電池があります。また、水素などの燃料と酸素を原料にして発電する燃料電池があります。燃料電池には、太陽光などの光をエネルギー源とする太陽電池、原子崩壊を熱エネルギーに変え、熱電変化により発電する原子力電池などがあります。
一次電池や二次電池の構造は、陽極と負極および電解質の組み合わせでできています。いずれの電池でも、電解質を介してイオンが移動し、電極で電子の授受が起こることにより電気を外部に取り出すことが可能です。
<一次電池>
一次電池は、安価なマンガン乾電池(ルクランシェ電池)と、長寿命のアルカリマンガン乾電池が最も一般的に使われています。このほか、ボタン型の空気電池やリチウムボタン電池があります。
<二次電池>
二次電池は放電後、充電を行うことで再生可能な電池です。電極物質と電解質の間で可逆反応が起こることが特徴です。古くからの鉛蓄電池、最も多くの用途で使われているニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、そして最近では高圧、長寿命のリチウムイオン電池が主役の座を狙っています。
(参考資料)
「よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み」 田中和明 著(秀和システム)
「レアメタル 技術開発で供給不安に備える」(独)産業技術総合研究所 レアメタルタスクフォース編 (工業調査会)