今月は、光機能材料として使用されているレアメタルについて、各種照明やテレビ、パソコンのディスプレイのバックライトなどで高機能・省エネ発光部品として、急速に市場が拡大しているLED(Light Emitting Diode・発光ダイオード)や有機EL(Organic light-emitting diode)および光通信、光磁気記録、プリンターなどに使われるLD(Laser Diode・半導体レーザー)、さらにPDPやCRT、蛍光灯などをとりあげてお話をしたいと思います。なお、有機ELは一般的にはLEDに分類されますので、本稿ではLEDとして取り扱うことにいたします。
1.LED(発光ダイオード)とLD(半導体レーザー)の原理
LEDは、半導体を用いたPN接合と呼ばれる構造で作られています。発光はこの中で電子の持つエネルギーを直接、光エネルギーに変換することで行われます。電極から半導体に注入された電子(過剰電子)と正孔(ホール)は、異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、PN接合部付近にて禁制帯を越えて再結合します。再結合時に、禁制帯幅(バンドギャップ)にほぼ相当するエネルギーが光(電磁波)として放出されます。放出される光の波長は材料のバンドギャップによって決められ、基本的に単一色で自由度が低いのですが、青色または紫外線を発するLEDの表面に蛍光塗料を塗布することで、白色や電球色などといった様々な中間色の発光ダイオードも製造されています。
なお、光の波長が非常に狭い物質は、一定波長(周波数)の強い光を発生するため、発光ダイオード(LED)ではなく、半導体レーザー(LD)と呼ばれます。
2.LEDとLDの基本構造
LEDの基本構造は、活性層とp型基盤、n型基盤、電極の組み合わせでできています。p型基盤をプラス極に、n型基盤をマイナス極に接続して電圧をかけると、前項の原理で発光します。
LDの構造は、LEDの構造に比べ活性層が複雑になります。クラッド材で活性層を包んで、クラッド層とします。さらに、反射鏡を付けて光を封じ込めながら一方方向に強い光出力があらわれる構造になっています。
3.LEDとLDに使われる各種レアメタル
放出された光の波長(色)は、pn接合を形成する素材のバンドギャップの大きさが関係します。発光ダイオードでは近赤外線や可視光、紫外線に至る波長に対応したバンドギャップを持つ半導体材料が用いられます。一般に発光ダイオードには発光再結合確率の高い直接遷移型の半導体が適する一方、一般的な半導体材料であるケイ素(シリコン)やゲルマニウムなど間接遷移型半導体では、電子と正孔が再結合するときに光は放出されにくいのです。しかし黄色や黄緑色に長く使われてきたGaAsP系やGaP系などドープした不純物の準位を介して強い発光を示す材料もあり、広く用いられています。
LEDやLDでは以下の素材を使用することにより、さまざまな色のLED、LDを作り出すことができます。
以下は基板として利用されています。
4.蛍光体に使われるレアメタル
(4-1)ディスプレイに使われる蛍光体
CRT(ブラウン管)やカラー・プラズマ・ディスプレイ(PDP)に使われる蛍光体は下図のようになります。ただし、CRTについては、ほとんどが液晶に取って代わりつつあり、最近では急速に生産量が落ちています。下図のCRT・モノクロはモノカラーの精細画像用の意味となります。
少し古い話になりますが、日立のカラーテレビ・キドカラーは希土類(レアアース)をブラウン管に使用しているということで、この名称がつけられたものです。
(4-2) 蛍光灯(ランプ)に使われるレアメタル
蛍光灯(ランプ)には、主にレアアースメタルの化合物を蛍光体母相に使います。活性層としてユーロピウムEuイオンやセイリウムCeイオンを注入します。
以上、今月はレアメタルの意外と知られていない用途のひとつである、光機能材料についての解説をさせていただきました。CRTなどは過去の遺物になりつつありますが、LED、LDなどはますます重要な役目を担うようになってきていますので、ガリウムGa、インジウムInなどのレアメタルの確保が、これからも重要な課題となっています。
(参考資料)
「よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み」 田中和明 著(秀和システム)
「レアメタル 技術開発で供給不安に備える」(独)産業技術総合研究所 レアメタルタスクフォース編 (工業調査会)
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