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風力発電の基礎シリーズ(2)

本シリーズのスタートの先月号では、“風とは何か?その発生の起源”、“風力発電が注目される理由”、“世界の風力発電導入状況”、“世界の風力発電機メーカーの状況”などの基礎的な情報について解説させていただきました。今月も引き続き、風力発電の世界の状況を知るために、先月号でお知らせした情報よりさらに新しい“世界の風力発電導入状況”および“エネルギー源としての風力の位置づけ”等を勉強することにいたしましょう。

1.世界の風力エネルギー見積り

地球上の風は、先月号の図に示すモデルに近い状況で吹いています。しかし、風は地域の地形や地理的条件によって異なり、よく吹く場所と、あまり吹かない場所が存在します。欧州のドイツ、デンマーク、スペイン、オランダ、イギリスなどは偏西風帯に位置し、年間を通じて適度な風に恵まれていることから風力発電が盛んで、昔から風車での粉挽きや揚水が盛んに行われてきた歴史があります。

風力発電は世界的に大規模な実用化が進んでおり、2010年には世界の電力需要量の2.3%、2020年には4.5~11.5%に達すると言われています。2010年末の風力発電の累計導入量は194.4GWに達し、前年に比べて22%増加しました。2010年末時点での累計導入量は、新規設備への投資額は2274億ユーロに達したようです。特にアジアでの伸びが顕著で、筆頭の中国での導入量はすでに42GWに達しています。

世界の風力資源を見ると、各大陸では次図に示すような分布となっていて、総合計では5万3000TWh/年となります。この値は、現在世界で使用している電力量の約3倍に相当します。しかも、この値には洋上の風力資源を入れていませんので、実際にはもっと多くなります。世界の電力消費量は2020年でも25万6000TWh/年程度と見積もられていることから、風力資源がどれほど大きなものであるかがわかると思います。

世界の風力発電の目標である、「Wind Force12」は、2020 年までに世界の電力の12%を風力発電でまかなうというものですが、十分に達成可能な資源量であると言えます。

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次図は、風力発電の世界累計導入量の最新データ(先月号の同資料に2009年、2010年のデータを加えたもの)および風力発電の世界累計導入量の将来の推定値を含めた資料です。

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2.各国の風力発電の導入状況

21世紀に入って世界各国の風力発電の導入量は急速に増加していて、前図のように2010年末の累積で194GWに達しています。

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各国の導入状況をみると、2006年の欧州での導入量は2005 年に比べ約19%増加し、48027MWに達しました。設備全体による年間発電量は約100TWhに達する見込みです。これは2005年の欧州全体の電力消費量の3%に相当します。2020年には欧州の全電力需要の13%を風力だけで賄える見込みになります。 政策的には、殆どの国が固定価格買い取り制度(フィードインタリフ)制と呼ばれる制度を軸として普及を進めています。

普及の最も進んでいるデンマークでは既に国全体の電力の2割が風力発電によって賄われ、なおも普及を進めており、2025年には5割以上に増やせるとしています。スペインでは2010年に風力発電で電力需要の16.6%を供給し、また電力由来の二酸化炭素排出量の26%を削減しました。非化石エネルギーのシェア増加により電力コストが抑えられて隣国フランスよりも安価となり、2010年には8.3TWhを輸出した実績があります。また2011年3月には風力発電による月間の発電量が21%を占め、原子力やガス複合火力を抜いて最大の電力供給源となりました。

一方、北米でも1980年代以降、カリフォルニア州や中西部の州に、大規模な風力発電ウィンドファームが建設されていますが、これらの州にも適度な風が吹いています。米国は2008年5月にエネルギー省(DOE)が2030年までに電力需要の20%に相当する約290GW を風力発電で賄うという目標を立ててからさらに設備が増えました。しかし2010年は金融危機等の影響で市場が前年より縮小し、中国に累計導入量で抜かれたようです。

次図は、各国の総電源に占める風力発電の比率です。

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3.欧州の風力発電の基幹送電網との連系

風力発電の発電量は、風の強弱によって変化します。このような変動のある電源を送電網に受け入れるために、それぞれの国で工夫をしています。デンマークは送電系統への風力発電電力の貫入率が世界一高く、平均で16%(夜間は50%以上)に達していますが、これは同国の送電網が北欧諸国のノルデルという強力な電力網とつながっており、その水力発電の負荷調整力に依存しているからなのです。また、スペインでは国内風車の70%以上が遠隔装置経由で単一の給電司令室につながれ、風力発電の投入量や電圧が一定値を超えると、一部の風車を停止させて、送電網の安定性を保っています。このように平均で12%(瞬間では最大41%)の風力発電電力を受け入れています。さらに、EU諸国の間には、イギリス-ドイツと北欧諸国を海底電線で結び、そこに数10GWの洋上風車を連系して、EU全体で送電系統の安定化を図る構想も検討されています。

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先月、今月と“世界の風力発電の現況”についてお話をしてきましたが、来月号では、“日本の風力発電の現況”、“風力発電の基本システム”等について解説させていただく予定です。

(参考資料)

「トコトンやさしい 風力発電の本」牛山 泉 著(日刊工業新聞社)

「風力発電機ガイドブック(改訂版)」金綱 均、松本文雄 共著(パワー社)

「(社)未踏科学技術協会 第53回特別講演会」 徳永雅亮 2010年1月14日

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