今回は先月に引き続き、天然ガスについてのお話です。先月は天然ガスの成分、世界の資源分布、埋蔵量、日本の輸入元などについて勉強してみました。また、現状の日本では全発電量の半分近くが天然ガス(LNG)エネルギーに頼っていることが分かりました。
今月は天然ガスについてさらに詳細に調べてみることにいたします。
(3-5)天然ガスの成因
石油と同じように天然ガスの成因には無機成因(起源)説と有機成因説があります。前者は生物活動の関与がなく、地球の原始大気のメタンやマントル、マグマに由来するガスが油・ガス田を形成するという学説ですが、商業量の集積は確認されていません。代表的な無機起源ガスは、火山や地熱地帯から噴出している二酸化炭素、窒素ガス、硫化水素ガスなどで大部分が非可燃性です。
一方、有機起源の可燃性天然ガスは、生物起源の有機物が化学変化を経て石油系可燃性ガスになったとする考え方(ケロジェン根源説)です。
地層の埋没に伴って地層温度が上昇すると、根源岩層中の堆積有機物のケロジェンから大量の炭化水素が生成します。この炭化水素は根源岩から貯留層へ移動し、トラップに集積して油・ガス田を形成します。現在の石油・天然ガスの探査活動は、この説に基づいて行われています。
この説を支持する根拠は、室内実験で有機物から石油に類似した物質が生成されること、油・ガス田のほとんどが堆積盆地にあることや地球化学的分析(バイオマーカ)などの証拠からです。
堆積物が次第に地下深部に沈降すると、温度と圧力の上昇によって岩石密度の増加、脱水、結晶化や石炭化などの地質現象が起こります。これを埋没続成と言います。有機物がこの埋没続成によって石油・ガスに変化する過程(熟成)はその度合から未熟成帯、熟成帯、過熟成帯の3つに分けられます。天然ガスはその生成過程の違いから、(1)地表や浅い深度で有機物が微生物によって分解されて生成されるメタンガス(未熟成帯)、(2)有機物の熱分解によって油が生成されるときに一緒に生成される湿性の随伴ガス(熟成帯)、(3)ガス指向の有機物(高等植物に由来する有機物が濃縮した炭質頁岩など)から生成されるメタンを主とするガス(熟成帯)、(4)高温の地下深部において油の分解によって生成される乾性ガス(過熟成帯)に分類されます。
(3-6)天然ガスの埋蔵形態
天然ガス鉱床は、在来型鉱床と非在来型鉱床に区分され、前者は現在の石油開発技術や経済条件で採算性のあるガス田を指しますが、アメリカなどでは後者のガス鉱床からも商業的にガスを生産しており、この分類は次第に不明瞭になりつつあります。
現在、世界の天然ガスは、大部分在来型の遊離性(構造性)ガス鉱床と油溶解性ガス鉱床から生産されています。遊離性ガスはメタン90~99%を主体とし、数%のエタン以上のガスを含みます。油溶解性ガスは地下で原油に溶けていたガスが地表で分離されたガスを示し、一般にエタン以上の重いガスやコンデンセートを含む湿性ガスです。
非在来型ガス鉱床には水溶性ガス、石炭層中に吸着されているコールベッドメタン、硬い緻密な岩石に賦存するタイトガス、根源岩中にあるシェールガス、燃える氷と称されるメタンハイドレートがあります。
その他に地球上には地球深層ガス、地圧水溶性ガス、バイオマスガスなどがありますが、まだ資源として評価されていません。
水溶性ガスは、微生物発酵による生物起源メタンから成り、地層水に溶解しています。共生する塩水には高い濃度のヨウ素イオンを含有しています。その代表例が千葉県で生産されているガスです。
アメリカでは、石炭を採掘する時、ガス井を掘削してガス爆発などを起こすメタンを石炭層から生産しています。また、極めて生産性が低く浸透率の悪い砂岩と石灰岩やフラクチャーの発達した頁岩からも天然ガスを回収しています。
メタンハイドレートはシベリアとカナダなどの永久凍土地帯や世界の深海の堆積層中に分布しています。日本の近海でも確認されており、将来のエネルギー資源として国家レベルの研究開発が行なわれています。
(3-7)天然ガスの世界の生産地域
2011年における世界の天然ガス生産量は3兆2800億m3でした。天然ガス生産国としては欧州諸国へ輸出しているロシアと国内消費の多いアメリカが頭抜けて多く、それぞれ、6510億m3、6070億m3を生産していました。
天然ガスの生産は地産地消の項で見たように消費と強く結びついていますが、生産地と消費地を結びつける手段は現在のところ、ガス体のままで送る天然ガスパイプラインか石油と同じように液体の形でタンカー輸送する液化天然ガス(LNG)かのどちらかです。
2011年におけるパイプラインおよびLNGによる貿易量はそれぞれ6950億m3、3310億m3でした。世界の主要なガス貿易の流れは、南北アメリカ大陸内および欧州ではパイプラインが主で、中東、豪州、東南アジア諸国からのアジア諸国へのガス輸出はLNGとなっています。最近ではアメリカも南米や中東からLNGでのガス輸入を増やしていますし、欧州でも地中海岸ではLNGでの輸入が増えています。
中東に一極集中する石油に対し、天然ガスは、中東とロシアの二極に集中しています。アジア・大洋州では相対的には天然ガスの埋蔵量が大きく、日本の近くでも豪州、インドネシア、マレーシアなどで天然ガスの開発が進められています。また、2009年3月には北海道のすぐ北にあるロシアのサハリン州からのLNGの輸入が始まっています。
(3-8)天然ガスの採掘技術と生産施設
天然ガスの採掘技術は基本的には石油の場合と同じですが、石油に比べ、天然ガスが賦存する地層の深度の方が深いことが多く、かつ、天然ガスの比重が石油よりも軽いことから地表部における流体の圧力が高くなります。そのため、坑井を掘削する際、および、生産する際に使用する機器類の耐圧は石油よりも高いものになります。採油井や採ガス井の地表部には坑口装置が取り付けられますが、ガス井のほうが大型化しています。
天然ガスは、主成分のメタンやエタンの他に油や水あるいは二酸化炭素などの不純物が混ざった状態で、採収用パイプを通して地下から地上に産出されるので、生産施設でこれらを分離・除去する処理を行います。
天然ガスの処理として、まずセパレータと呼ばれる装置に通し密度差を利用して、天然ガス、コンデンセート(油)、水に分離します。
セパレータを出た天然ガスには、密度差だけでは除去できない微量の水や不純物が残っていることがあり、これが残っていると、圧力や温度の条件次第でハイドレートが発生し、生産施設やパイプラインを詰らせてしまったり、腐食の原因になったりします。そこでこの微量の水を除去するための施設に脱湿施設がありますが、多く使われているのは、天然ガスとグリコールを接触させ、水分をグリコールに吸収させて除去するグリコールデハイドレーターと呼ばれるものです。
分離されたコンデンセートは石油化学原料として、あるいは、沸点の違いを利用してプロパンやブタンなどに分離し、LPGとして販売します。水は通常環境を汚染しないよう油分や環境汚染物質を除去した後に地下へ圧入しています。
このように生産施設で処理された天然ガスはパイプラインによって気体のまま販売したり、マイナス62℃まで冷却し液体として販売します。
天然ガスは、熱量を基に取引されるのが一般的です。熱量を計量するために、ガスの成分割合を分析し、各成分の熱量の加重平均で総熱量を算出します。また、体積を計量する場合、よく使用される計量器として、差圧式流量計や渦式流量計があります。差圧式流量計とは、天然ガスが流れるパイプに、オリフィスプレートと呼ばれる絞り機構を設置し、天然ガスが流れる時、その流れが邪魔され下流側の圧力が上流側より下がります。この圧力差を測定することで、流れている量の計測を行います。
今月は以上ですが、次回は引き続き天然ガスについて、運搬、貯蔵の最新技術をご紹介いたします。
以上、今月は天然ガスの基本成分、世界と日本の利用状況、主な産出国とその埋蔵量などについて勉強してまいりました。次回も引き続き天然ガスについて調査した結果をお話したいと思います。
<参考・引用資料>
「トコトンやさしい天然ガスの本」第2版 日刊工業新聞社
(社)日本ガス協会ホームページ
JOGMECホームページ
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