前回のシリーズ“原子力エネルギー”は化石燃料に代わる新エネルギーとして期待されてきましたが、“安全上の問題”や“安定性の課題”が種々あることが分かってきました。そのために、世界の、とりわけ我が国の基幹エネルギーとしての期待は先送りないしは後退を余儀なくされています。
このような中で、世界および日本のエネルギーはまだまだ化石燃料のエネルギー・資源にその多くを頼らざるを得ないわけです。しかしながら、このシリーズで勉強してきましたように、化石燃料資源とて人類にとって将来性のある資源は一部に限られていて、当然ながら化石燃料、原子力燃料以外の新たなエネルギーの開発が求められているわけです。
そこで、本シリーズの初回に掲載しました下図のエネルギー資源の中で“再生可能エネルギー”がますます重要となりつつあり、地球上の消費エネルギーに占めるその割合も年々増加してきています。今月からはこの“再生可能エネルギー”を本シリーズの最後のエネルギーシリーズとして数回にわたって勉強して行きたいと思っています。
(6-1) 再生可能エネルギーとは何か?
再生可能エネルギーとは本来、「絶えず資源が補充されて枯渇することのないエネルギー」、「利用する以上の速度で自然に再生するエネルギー」という意味の用語ですが、実際には自然エネルギー、新エネルギーなどと似た意味で使われることが多いようです。
さらに一般的な表現をすれば、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、地球上で自然に起きる現象を繰り返しエネルギー源として利用することができると認められるもの」ということになります。永続的に利用できるのですから、地球環境が存在するかぎりなくなることはありません。ただし、詳細な定義や、法規や統計にどのようなものを含めるかについては、個別の資料・団体・法規などにより差異が見られます。
再生可能エネルギーは、太陽光エネルギーや、地球そのものの活動によりもたらされています。具体的には、太陽光エネルギーに基づくものとして、太陽光発電、太陽熱発電、バイオマスエネルギー、風力発電、海洋温度差発電、氷雪冷熱利用、空気熱利用、地中熱利用などがあります。
一方、地球そのものの活動に基づくものとして、潮力発電、地熱発電そして偏西風による風力発電などがあります。
太陽光発電や太陽熱発電は、太陽光エネルギーを直接電気や熱エネルギーに換えて利用します。バイオマスエネルギーは植物を利用します。植物の光合成は、太陽光エネルギーを使って二酸化炭素と水からブドウ糖などの有機物をつくって同時に酸素を発生します。これは太陽光エネルギーを物質として蓄えたことになります。
風力は大気の循環によって発生します。太陽光が地表や海面近くを温め、それに接している空気も温められます。温められると空気は膨張するので、軽くなり、上昇します。そのあとに流れ込んでくるのが風であり、それを利用するのが風力発電です。風の源は太陽光エネルギーですが、それに地球の自転運勁が加わって、多様な風がもたらされます。
水力発電は太陽光エネルギーによって蒸発した水が大気上空で水になって降り注ぐ雨や雪を利用しています。太陽光以外では、地球の自転や月の公転に伴って海水に働く潮汐力を利用するのが潮力発電で、地球内部からの熱を利用するのが地熱発電です。
(6-2) 再生可能エネルギーが期待される理由
わが国は資源が乏しく、化石燃料のほぼ全量を海外から輸入しています。ところが、新興国は経済発展のために化石燃料を使いたいので、その価格は高騰してきました。一方、化石燃料の豊富な地域は、政治的・民族的紛争も多く、不安定な供給、価格の極端な変動も引き起こし、今後ますます生産量や価格の安定化は困難になると思われます。また、化石燃料の運搬ルートであるペルシャ湾、南シナ海、東シナ海では海洋権益や領海の争いが絶えず続いています。
現在のわが国のエネルギー自給率は、原子力発電を除くとわずか6%(2014年エネルギー白書)にしか過ぎません。国内で調達できる再生可能エネルギーを増やすことは、エネルギーを安定に供給するうえで非常に重要なのです。
また、化石燃料を使うと、廃棄物が必ず発生します。石油・石炭や天然ガスでは、主に二酸化炭素CO2、核燃料では放射性廃棄物です。二酸化炭素は温室効果ガスであり、地球環境に影響を与える可能性があります。また、放射性廃棄物はいまだその処理を行う有効な手段が見出されていません。
一方、再生可能エネルギーは、そもそも地球上で起こる自然現象に基づいています。これは人間がエネルギー源として使うか使わないかに関わらず、自然に起こっています。したがって、これを人類が一部利用しても、それに伴って新しい廃棄物や廃熱が生じるわけではないので、環境の変化も起こりにくくなります。
たとえばバイオマスエネルギーを考えてみましょう。バイオマスエネルギーとは、エネルギー源や原料として使うことができる、再生可能な生物由来の動植物資源(化石燃料は除きます)の総称です。バイオマスは有機物なので、燃焼させてエネルギーとして利用した場合には、CO2か発生します。廃棄物としてCO2を排出しているようにみえます。しかし、柚物は光合成をして生長するためにCO2を吸収します。エネルギーとして使う前と同じだけ生長すると、排出したCO2と等量のCO2を吸収します。つまり、全体でみるとCO2は増えません。このようにバイオマスエネルギーは物質的に環境負荷をかけないのです。
(6-4) 十分活用されていない再生可能エネルギー
いいことばかりのような再生可能エネルギーですが、実際にはどのくらい使われているのでしょうか。現在、日本では、再生可能エネルギーは発電に使われていることが多いのですが、2014年度では、1年間の全発電量のわずか3.2%にすぎません。ただし、これには大規模な水力発電は含まれていません。2000年以降この割合はわずかに1%程度しか増加していません。大規模な水力発電を含めると、2014年度はおよそ12%程度となります。
一方、世界に眼を向けてみましょう。世界の場合は発電よりも熱利用などが大きな割合を占めています。2010 年には、世界の最終エネルギー消費量の19%を再生可能エネルギーが占めています。ただし、この再生可能エネルギーの内訳を見てみるとほぼ半分以上を薪や動物性および植物性廃棄物などを、直接燃やして、主に調理と暖房に利用する伝統的バイオマスが占めています。伝統的バイオマスは、効率が良くないため、今後はより効率的に利用し、より近代的なエネルギー源に代替することになるでしょう。
さて、伝統的バイオマスを除くと、世界では最終エネルギー消費量のわずか6%を再生可能エネルギーが占めるにすぎません。再生可能エネルギーはこれまで述べてきたような利点が数多くあるのに、なぜこんなに使われていないのでしょうか。それには、物理的要因、技術的要因、経済的要因、社会・制度的要因があると考えられます。
物理的要因には、エネルギー密度が低い、偏在している、不安定である、などがあります。技術的要因は、たとえば太陽光発`咀であれば、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率がまだだ低いことです。経済的要因としてはなんといってもコストが高いことが上げられます。また、社会・制度的要因には、土地の使用の問題や既存の電力網との関係、電気料金設定の問題などがあります。
次回からはこれら再生化可能エネルギーの詳細、普及上の問題点、技術課題、解決策等について詳しく調べて行くことにします。
<参考・引用資料>
「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」 太田健一郎 監修、石原顕光 著 日刊工業新聞社
「なっとく再生可能エネルギー」 資源エネルギー庁ホームページ
「再生可能エネルギー」 ウィキペディア
「新エネルギー」 新エネルギー財団ホームページ