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エネルギー資源の現状と将来(20)<再生可能エネルギー(6)-その3>

今月は(6-5)太陽光発電の続きとして、その課題、問題点について分析してみました。2012年7月から固定価格買取制度が始まったことで、企業や自治体が太陽光発電に取り組む動きは全国各地へ急速に広がっています。未利用の土地を活用して安定した収益を上げられるからですが、一方でさまざまな課題も浮かび上がってきています。

[4]世界の太陽光発電市場(6-5:太陽光発電の続き)(*Energy Democracy ホームページより)

世界中で自然エネルギーが急成長するなか、太陽光発電が躍進を続けています(次図)。太陽光発電は、シリコンなどの半導体から作られる太陽電池セル(Solar Cell)を用いて、太陽光のエネルギーを直接、電気に変換する方式が主流になっています。

国際的に太陽光発電の略称としてPV(Photovoltaic Power Generation)が用いられますが、太陽光を集光し熱に変換して発電する太陽熱発電(CSP, Concentrated Solar Power)とは区別されています。

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REN21が発行する「自然エネルギー世界白書2014」によれば、太陽光発電の設備の主要部品を構成する太陽電池セル(結晶シリコン)の世界全体の生産量は、2005年の190万kWから2013年には4,300万kWと20倍以上に急成長しました。生産設備への投資が進んだ結果、太陽電池モジュールの生産能力は世界全体で年間6,760万kWに達しています。一方、2005年には日本メーカーの生産量が世界シェアの55%を占めていましたが、2012年には5%まで大幅に低下しています(生産量は194万kWと2倍以上に増加)。その代わりに、欧州メーカーの躍進の後、中国/台湾のメーカーが急激に世界シェアを拡大して2007年にはトップとなり、2012年には中国が世界の太陽電池セル生産量の67%(約3分の2)のシェアを占めています。その結果、2013年には日本を含むアジアでの生産量が世界全体の87%を占めるに至りました。

太陽電池モジュールの価格も生産量の拡大と共に急速に低下し、欧州などの一部の国では住宅用太陽光発電のコストが、利用している電気料金を下回るレベルになっています。なお、世界全体の太陽光発電の年間導入量は2014年には約1,500億ドルに達しています(GlobalTrends in Renewable EnergyInvestment 2015)。これは2014年の自然エネルギー市場全体の投資額2,700億ドルの半分以上に相当します。日本での投資額は343億ドル(約4兆円)で世界第3位の市場となっており、その大部分が太陽光発電です。

2014年も前年に引き続き、世界の太陽光発電市場にとって記録的な年となりました(EPIA, European Photovoltaic Industry Association 2015年3月プレスリリース)。年間で約4,000万kWの設備容量を新規に導入したことにより、累積導入量は約1億8,000万kWに達しようとしています。中でも2014年も前年に引き続き中国が、世界の新規導入量の約4分の1を占め、世界第1位の約1,000万kWを導入しました。日本は約900万kW(推計値)を新規に導入し、約600万kW導入した米国がその後に続いています。欧州では英国での230万kWの導入量が最大で、ドイツは約190万kW、欧州全体の新規導入量でも約700万kWに留まっています。

2014年末の累積導入量ではドイツが約3,800万kWで依然としてトップですが、これに中国が約2,800万kW、日本が約2,200万kW(推計値)、米国が約1,800万kW、イタリアが約1,800万kWの累積導入量で続いている状況になっています(次図)。

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これまで導入を積極的に進めて来た欧州では太陽光発電の導入比率が高まり、電力供給において重要な役割を担うようになりつつあると共に、電力需給に対して大きなインパクトを及ぼすまでになっています。すでにイタリアでは年間電力消費量のうち7.6%が太陽光発電で供給されています(日本は約2%)。ドイツでは6%近くが太陽光発電で供給され、日によっては20%を超える日もあり、昼間のピーク時の発電出力が電力需要(デマンド)全体の半分近くに達する場合もあります。大規模な発電設備のシステム数や規模も引き続き拡大していますが、市場の拡大から企業やコミュニティが所有する太陽光発電システムに対する関心が高まりつつあり、実際の導入も進んでいます。一方で価格の低下によりアフリカや中東、アジアやラテンアメリカなどの新興国において新たな市場が見いだされつつあります。

[5]太陽光発電の課題・問題点(※スマートジャパン・再生可能エネルギーの現実(1)より)

いま日本全国いたるところで、太陽光発電フィーバーと呼べるほど数多くの建設プロジェクトが進んでいます。資源エネルギー庁によれば、2012年7月に固定価格買取制度を開始して以降、発電能力が1MW(メガワット)以上のメガソーラーで認定を受けた件数は8カ月間(2013年2月末時点)で1755件にのぼっています。これは1つの都道府県あたり40件近い数です。

太陽光発電は5種類の再生可能エネルギーの中で環境に対する影響が最も小さく、発電設備を導入するまでのプロセスが短くて済みます。市場の拡大に伴って太陽光パネルの価格も低下して、ますます導入しやすくなってきました。未利用の土地を保有する企業や自治体が続々とメガソーラーの建設に乗り出しています。

■建設前と建設後にも課題がある

とはいえ海外の主要国と比べると、太陽光発電を含めて日本の再生可能エネルギーの導入量は極めて少なく、2012年度でも日本全体の総発電量のうち、わずか1.6%を占めるに過ぎません(次図)。これから相当なペースで増やしていく必要がありますが、日本特有の問題もあって、計画通りにプロジェクトが進まないケースも多いようです。

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■農山村地域に残る「農地法」の壁

用地に関しては法律の制約が大きく、特に問題になるのが「農地法」です。健全な農業の発展を目的に作られた法律で、農地の利用法を厳格に定めています。原則として農地に指定されている土地を農業以外の用途に使うことはできません。長年にわたって農作物を作っていない「耕作放棄地」も規制の対象になります。

全国各地の自治体が太陽光発電を導入できる可能性のある場所を調べると、その中に耕作放棄地が数多くあります。農作物の代わりに太陽光発電で収入を得ることができれば、耕作放棄地は新たな収益源に生まれ変わるわけです。

2013年3月に農林水産省が新たな方針を発表して、一定の条件を満たせば農地に太陽光発電設備を導入することが可能になりました。ただし、太陽光パネルを設置する支柱を高くするなどして、パネルの下で農業も継続できるようにすることが条件になっています。一方、耕作放棄地の取り扱いについては検討課題のまま残されています。農林水産省の迅速な対応が望まれところです。

■避けて通れない電力会社との「連系」

第2の課題である送配電ネットワークへの接続に関しては、徐々にだが対策は進みつつあります。太陽光発電と風力発電は天候によって出力が安定しないために、発電した電力を受け入れる送配電ネットワークに支障が生じてしまう可能性があり、特に規模の大きいメガソーラーが増えると、その確率が高くなります。

発電設備を送配電ネットワークに接続することを「連系」と呼び、設備を建設する前に電力会社とのあいだで「連系協議」の場を設けなくてはなりません。この協議を通じて発電設備を送配電ネットワークに接続するための具体的な方法を決める必要があります。送配電ネットワークに支障が生じると判断されれば、電力会社は接続を拒否することが可能になっています。

現実に北海道ではメガソーラーの建設プロジェクトが急増した結果、送配電ネットワークの許容範囲を超えるような状態に近づいてしまいました。経済産業省は2013年4月に通達を出して、北海道内でメガソーラーの建設を控えるように事業者に要請したほどです。

そのうえで緊急対策として、大型の蓄電池を使って太陽光発電や風力発電による出力の変動を抑制する実証実験を電力会社が進めています(次図)。発電事業者の中にはメガソーラーの設備に蓄電池を併設する取り組みも見られ、その分の設備費が増えるものの、事業全体で収支が成り立てば、メガソーラーを長期に安定して稼働させるための対策としても有効になります。

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■安定稼働のために発電設備の点検と保守を

運転を開始した後に安定稼働を続けるためには、さまざまな対策が必要になります。特に重要なことは発電設備の点検と保守です。メガソーラーのような規模になると、何千枚もの太陽光パネルが使われます。屋外に設置されていることもあり、不具合が生じて発電できなくなるパネルが出てきますが、それを放置しておくと、当然ながら発電量は少なくなります。

たとえ不具合が生じなくても、時間の経過とともに性能が劣化しますが、製品によって劣化の度合いにも違いがあります。検査機関によると、1年も経たないうちに性能が大幅に落ちてしまう太陽光パネルもあるようです。

そうした事態に備えて、遠隔監視システムを利用する事業者が増えています。太陽光パネルからの発電量を専用の装置で計測して、そのデータを集めてシステムで分析する方法です(次図)。合わせて日射量や気温も測定することで、適正な発電量を得られているかどうかを確認することができます。

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太陽光発電についてはこれで終了としますが、さらに詳細な技術内容、各種統計資料などを知りたい方は、資源エネルギー庁のホームページや関連研究機関のホームページ、専門の出版物などで調べてみてください。

次回からは、その他の再生エネルギー(風力、地熱、バイオマス、波力など)について順次ご報告してゆく予定です。

<参考・引用資料>

「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」 太田健一郎 監修、石原顕光 著 日刊工業新聞社

「なっとく再生可能エネルギー」 資源エネルギー庁ホームページ

「Energy Democracy」ホームページ

「スマートジャパン」ホームページ:再生可能エネルギーの現実(1)より