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地球の科学と自然災害(13)<津波-その2>

前回から「津波」について詳細な調査報告をお伝えしています。前回は“津波発生のメカニズム”、“津波のつたわり方”、“津波の速度、高さ”などについてお話をさせていただきました。今月は引き続き、“津波の押寄せ、引きの特徴”や“津波の観測・計測の方法”などについて調べてみました。

[津波-6]津波の遡上 *引用「地震と津波-メカニズムと備え」本の泉社

陸地に達した津波は、洪水の流れのように陸地に流れ込むことになります。海面の持ち上がりが大きければ大きいほど、流れ込む海水の量と勢いは強いのです。流れが強いままで斜面などにぶつかると、そこを駆け上ることになります。

その結果、海岸での津波の高さをはるかに越える高さまで登ることがあり、数十メートルの高さまで駆け上ることもよく見られます。当然、その最高点に達するまでは勢いのある流れであり、遡上する途中の家屋や車などを片端から押し流すことになります(次図)。

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海岸から平野が拡がっている地域では、津波は、平野上をかなり奥まで流れ込むことになります。川や運河では、前方に障害物がないことと実質的に水深が深くなることから、陸地に比べさらに奥まで津波は遡ることができるのです。川の形状によっては、上流側で津波が堤防を乗り越える場合が出てきます。そのため津波は、海方向からだけではなく横方向はもちろん、極端な場合は海とは反対方向から来る場合もあるのです。

波の谷に当たる部分が来ると、それは海面がはるか沖まで通常より下がることを意味します。遡上した海水は、その低い方へ流れようとするので、巨大な引きの流れになり、海水と一緒に家屋などが海の方へ引きずりこまれることになります。

[津波-7]津波の常流と射流 *引用「地震と津波-メカニズムと備え」本の泉社

東北地方太平洋沖地震にともなった津波で、という射流現象が起きたのではないかという指摘がなされています。下記は地震直後の日本経済新聞の記事です。

―――津波、強力な「射流」か時速数十キロ、家屋流す2011/3/21付日本経済新聞―――

今回の津波は高速で一気に押し寄せる「射流」と呼ばれる特殊な状態だったことが東京大地震研究所の都司嘉宣准(地震学)の分析で分かった。通常の津波より数倍速く強いエネルギーを持ち、被害拡大につながったとみられる。

 

都司准教授によると、通常の津波は「常流」と呼ばれる状態で、時速10キロ以下で押し寄せ、人が溺れる危険はあるが家屋を押し流す力はない。一方、射流は時速数十キロで、水位が低くても家屋を簡単にさらうほどのエネルギーという。都司准教授は、東大地震研が岩手県釜石市の30~50キロ沖に2基設置した海底津波計のデータに着目。地震発生から12分程度は約1.5メートルまで水位が徐々に上昇し、その後約2分で6メートル近くまで跳ね上がったことが判明した。

今回のような海溝型地震では海底がプレート境界に沿って隆起し津波を引き起こす。ただ、一様に隆起しただけで流」は起きないといい、都司准教授は震源域の中で特に大きく隆起した場所があったと推定。

 

地形や観測データなどから震源のやや東側の約50キロ四方の地盤が周囲より3~4メートル多く盛り上がり、海岸で高さ約15メートルに達する津波が発生、持ち上がった大量の海水が落下したエネルギーで射流が起きたと結論づけた。釜石市などで被災者が撮影した映像などとも矛盾がないといい、都司准教授は「最初はゆっくりだったが、突然壁のような波が起きて凶暴な津波と化し、一気に市街地を破壊したのでは」と話している。

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上記の記事のように同じ量の水が流れるとき、「常流」と「射流」の二とおりの流れが起き得るのです。一つは、水位が高くてゆっくりと流れる場合(常流)で、もう一つは、水位が低く高速で流れる場合(射流)です。

例えば、川の中にある堰堤を考えてみます。堰堤を越えて下る流れは、堰堤に沿うようにして薄く速い流れになります(射流)。一方、その少し下では、川は水深も増してよりゆっくりと流れています(常流)。どちらも流れている水量は同じですが、流れのエネルギーが運動エネルギーに多く使われている方が射流です。

通常の津波は常流であると考えられますが、非常に高い津波の段波が陸に達したとき、堰堤を下るように水が流れ落ちて、高速で陸上を流れる場合があると考えられます。こうした流れが射流状態になる可能性があるのです。

もしこのような流れが起きると、大きな運動エネルギーを持つので、破壊力が大きいと考えられます。また、流れの下の地面などを掘り起こすような力も大きいのです。

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実際の津波観測はさまざまな方法でなされています。日本各地に験潮所が設けられています。これは、海面の高さを常時記録する観測点て、通常の波の影響を避けるため、深めの場所に作られた導水管で海水が観測井戸に導かれ、その井戸での水面の高さが測定されています。

験潮所は、港近くの陸地に造られているので、津波が陸地に到達したときの高さを記録しています。そのため、そのときの津波については、防災などの面からはあまり貢献できないのです。

 

津波が陸地を襲う前に知るためには、できるだけ沖合に、計測装置を設置することが必要です。現在設置されているものには、海面上に置くものと海底に置くものとがあります。

 

前者は、海面上のブイで、GPS里などにより海面と一緒に動くブイの位置を求めて、海面の上下変動を監視するものです。後者は、水圧の変動などを測定して、水面の変動量を測定するものです(前図参照)。これらの測定装置により記録された東北地方太平洋沖地震による津波のデータは、地震の解析には非常に有効ですが、残念ながら、直接は警報には利用できなかったのでした。

 

陸上での津波の高さやどのくらい奥まで津波が達したかは、津波後の現地調査で調べることになります。ニュースなどで報道されるように、建物の壁に残った水面の跡や、山肌に残った水流の跡などを測定するという地道な調告』になるのです。陸上での津波の流速や破壊力の強さなどは、各地で撮影された映像などからも解析されます。

[津波-9]大昔の津波の痕跡調査

過去に発生した津波のうち比較的新しいものについては、古文書などによる被害記録から推定できます。もっと古いものや文書がのこっていない津波も、ある程度までは地下の地層などから同定できる場合もあります。

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例えば、869年の貞観地震による大きな津波が東北地方を襲ったことは、東北地方太平洋沖地震の発生以前から、古文書に記載があることが知られていました。さらに東北地方における津波堆積物などの研究からも、対応する大津波が明らかにされていました。

 

津波の際、海水とともに大量の海砂等が陸地に運ばれ、遡上した場所に残されます。また時として、津波石と呼ばれるような、大きな岩が津波によって陸地のかなり高い場所に運び上げられている場合もあります。もし、砂の堆積物が後の堆積物で埋められたなら、地層として地下に保存されます。

ボーリングなどでそうした痕跡を調べることで、過去の津波が海岸からどれくらい奥まで、またどのくらいの高さまで達したか、そして砂層の堆積年代からは津波発生の時期が推定できます。同じ時の津波によると判断される津波堆積層を海岸にそって追跡することで、津波波源域つまり断層の広がりなども推定できます。

これまでに日本各地で、津波堆積物の調査がさまざまな研究者によって進められています。そして、東北地方や北海道の太平洋沿岸で、通常の巨大地震の津波に混じって、数百年程度の間隔で非常に大きな津波が繰り返し発生している痕跡が発見されています。また西南日本でも同様に、大津波が繰り返していることが池の堆積物などから調べられています。その中には、特別厚い津波堆積層などが発見されており、巨大地震や超巨大地震の解明につながると期待されています。

 

次回は「津波の予測システム」と「大津波への備え」についてご報告したいと思います。

参考・引用資料>

「気象庁」ホームページ

「地震と津波-メカニズムと備え」 日本科学者会議編 本の泉社

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