本シリーズのスタートとして、前3回は“宇宙の誕生と歴史”、“宇宙の形”、“宇宙の力”などの「宇宙の姿=宇宙論」についてお話をしてきました。したがって、少々難解な章が続いてきましたが、今月からは宇宙の範囲を少し狭めて「私たちに見える宇宙=銀河」について勉強してみましょう。
私たちが暮らしている地球は、太陽のまわりを回っています。太陽は、地球を含む8個の惑星と、月を含む多くの衛星、そして、無数の小さな天体を引き連れ、太陽系ファミリーをつくっています。そして、太陽のような星が、約1000億個集まって、私たちが住む銀河系(天の川銀河)ができているのです。
宇宙空間はとても広いので、星たちは銀河の船に乗り合わせるように、銀河の一員となって宇宙空間に浮かんでいます。星の光でできた銀河は、まるで漆黒の宇宙に浮かぶキャンドルのように見えています。
宇宙には、約1000億の銀河があるといわれています。1000億の銀河たちは、つながりあい、無数の空洞を囲むように宇宙空間に広がっているようです。
[銀河-1] 私たちのすみか・銀河系(天の川銀河)
銀河系とは、私たちが住んでいる銀河のことです。
星は、ばらばらに宇宙空間に浮かんでいるわけではありません。多くの恒星、惑星、星雲などが集まり、集団で浮かんでいるのです。この天体の集団は、銀河と呼ばれています。宇宙には銀河が無数に存在しているので、私たちの住む銀河はほかの銀河と区別するために、「銀河系」または「天の川銀河」と呼ばれています。
私たちは銀河系に住み、その姿を内側から眺めています。見上げる夜空の星たちは、銀河系をつくっている仲間です。星座をつくる星は、近くの星たち。光の帯のように見える天の川は、遠くの星たちです。銀河系は、2000億の星が寄り添って、星の集団をつくっているのです。
天の川の幅が広くなっているのが、銀河系の中心です。いて座の方向にあり、夏の夜空に見ることができます。天の川は、さそり座を通り、いて座で一番広がり、七夕で有名な織姫星(織女星)と彦星(牽牛星)の間を抜け、細くなっていきます。
私たちは、銀河系を外から眺めることはできません。でも、もし眺めることができたとしたら漆黒の宇宙に浮かぶ雄大で荘厳な銀河系の姿に、きっと息を飲むことでしょう。
[銀河-2] ブラックホールを持つ銀河系
大気の澄んだ場所で、夜空を見上げると天の川が見えます。天球をうっすらと走る白い星の道は、古代ギリシャでは「ミルクの道」と呼ばれました。今では、この天の川が2000億以上の星の集まりからなることがわかっています。この天の川は、銀河を内側から見た姿なのです。この銀河系(天の川銀河)は直径10万光年、数本の腕をもつ渦巻状の銀河だと考えられています。
中心部にはバルジと呼ばれる部分かあり、その形は棒状の楕円体と考えられるため、銀河系は棒渦巻銀河であるようです。バルジは長径が1万5000光年あり、たくさんの星が集中して集まっています。中心に向かうほど星の密度は高くなり、その芯には巨大なブラックホールがあると考えられています。
バルジの周りには扁平な銀河円盤が、中心から5万光年くらいまで広がっています。この円盤部分に、腕と呼ばれる星の集まった構造があり、さらに中心から数百~3000光年のところには、電離していない中性の水素からなる円盤があります。
銀河円盤の外側はハローと呼ばれる球状の構造が覆っています。銀河系質量は太陽質量の2兆倍と見積もられていますが、その質量のほとんどをハローが占めているようです。ハローは3層からなり、内側のハローには球状星団や年老いた星が、中間層には希薄な高温ガスが、最も外側にはダークハローと呼ばれる層があります。このダークハローの直径は約60万光年、現在の技術では観測できない暗黒物質で満たされています。
では、私たちの太陽系はどのような位置にあるのでしょうか。銀河系の数本の腕の中で、太陽系はオリオン腕と呼ばれる腕の中にいます。銀河中心から2万8000光年、太陽系の黄道面が銀河面から68度傾いた状態で存在します。銀河面(銀河赤道)とは、円盤状の銀河系の中心を通る、ちょうど円盤に水平な面を言います。そのため、太陽系の中にある地球から天の川を見ると傾いて見えるのです。地球から見ると、銀河系の中心はいて座の方向にあります。いて座付近の天の川がひときわ輝いて見えるのは、そのためです。
[銀河-3] 銀河系の仲間たち
この宇宙には、銀河が1000億個以上あるといわれています。私たちの住む銀河系もその中のひとつですが、行動をともにしている銀河たちがいます。銀河系は40個以上の銀河とつながって、群れをつくって宇宙を旅しているのです。
小さな銀河が多い群れですが、地球上から肉眼で見ることができる銀河が3つあります。
まずは南半球に行くと見ることができる大マゼラン銀河と小マゼラン銀河です。この2つは、小さな銀河なのですが、銀河系の近くにあるため、肉眼でも見ることができます。いつも銀河系のそばに寄り添って、行動をともにしているため、「伴銀河」と呼ばれています。
大マゼラン銀河(大マゼラン星雲)は、いびつな形をした不規則銀河で、銀河系から15万光年のところにあります。こうした不規則銀河は、小さな銀河が大きな銀河の重力に影響を受けて、形がゆがめられてできるものが多いと言います。さらに、銀河系から約20万光年離れたところには、小マゼラン銀河(小マゼラン星雲)があります。
大、小のマゼラン銀河は、約5億年前に銀河系に大接近したようです。このときにどちらか一方、あるいは両方の銀河から引きずり出された水素のガスは、マゼラニック・ストリームと呼ばれる、3つの銀河の間に流れる帯状の筋をつくりました。
銀河系が、数ある銀河の1つにすぎないことの証明となったアンドロメダ銀河までの距離は、今では約230万光年ということがわかっています。形は銀河系とよく似た渦巻銀河で、直径約13万光年です。
この北半球から秋に見える、アンドロメダ座のアンドロメダ銀河です。このアンドロメダ銀河は、群れの中で一番大きく、銀河系の3倍の重さがあります。銀河系は二番目の大きさです。
実は、このアンドロメダ銀河と、私たちの銀河系の2つの銀河はひかれ合い近づいているのです。遠い将来、2つの銀河はひとつになり、新しい星がたくさん誕生することでしょう。
銀河系から300万光年の範囲には、アンドロメダ銀河を含む約30個の銀河が集まった局部銀河群があります。銀河の数個~50個くらいまでの集まりを銀河群、数百から数千の集まりを銀河団と呼びます。星々が集まって銀河をつくるように、銀河もまた集まって宇宙の構造をつくっているのです。
銀河団はさらに巨大な超銀河団に含まれ、ここには数万個の銀河があり、直径は数億光年に及びます。超銀河団も連なって宇宙の大構造をつくっています。
銀河系は、おとめ座銀河団を中心とした、直径約1億光年の超銀河団(局部超銀河団)の一員です。
[銀河-4]ハッブルの銀河分類
近くの銀河を見ただけでも、不規則銀河や渦巻銀河など、銀河にはさまざまな形があります。ハッブルは銀河を形で分類しました。それがハッブルの銀河分類です。銀河の形には、楕円銀河、渦巻銀河、不規則銀河の大きく分けて3種類があります。ハッブルの分類図では、左端に楕円銀河(E)を、右端に渦状の腕をもつ渦巻銀河(S)が置かれ、その中間型としてレンズ状銀河(SO)を仮説的に配置しました。
楕円銀河は、球状のEOから強い楕円体のE7まで8つに分類されます。渦巻銀河は中心部のバルジが楕円のSと棒状の棒渦巻銀河(SB)に分れます。さらに巻の強さはa、b、cの3段階で弱くなります。不規則銀河については、Irrとされ、当初、配置されていませんでした。
それぞれにおおまかな特徴も見られます。楕円銀河は種族IIと呼ばれる星々からできた銀河で、星間ガスもほとんどありません。一般に、新しい星形成はあまりありません。種族IIの星とは、ヘリウムより重い元素を少ししか含まず、100億年以上前に生まれ、ゆっくりと燃えている古い星です。宇宙が生まれて間もないころに生まれた星々だと考えられています。長い寿命で細々と輝く星々を抱えた楕円銀河には、暗いものも多のです。
渦巻銀河には、若い星、種族Iの星が多く、次々と星々が生まれています。種族Iの星とは、水素やヘリウムよりも重い元素を含む質量の重い星です。種族Iの星は一般に寿命が短い。つまり、比較的新しい時代に生まれた星ということになります。これまで観測された銀河の3分の2は渦巻銀河ですが、宇宙全体では楕円銀河の方がはるかに多いと考えられています。
不規則銀河は、主に種族Iの星からなり、活発な星形成が進んでいるものもあります。不規則銀河は、銀河が宇宙で生まれはじめた頃、星形成の激しい時代に数多く存在したと考えられています。
以上、今月は「銀河」についてのお話となりました。星々の集団「銀河」は私たちの住む銀河系のほかにも無数存在していることが分かりました。ただし、目に見えるすぐ近くの銀河でも15万光年離れているわけですから、宇宙の広さは気の遠くなるほど広いことが実感できます。
次回も「銀河」についてのお話となります。
<参考・引用資料>
「知識ゼロからの宇宙入門」渡部潤一、渡部好恵 、ネイチャープロ編集室 発行元:幻冬舎
「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社
「宇宙の秘密がわかる本」宇宙科学研究倶楽部 発行元:株式会社学研プラス