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おもしろい宇宙の科学(9)<太陽系-その1>

前回までは「宇宙の誕生・宇宙の姿・宇宙の膨張」などの宇宙論から始まり、「銀河」、「恒星」、「ブラックホール」などの話題へと続けてきました。これまでのところは、筆者はもちろんですが読者の皆さんも理論的・概念的な内容が多く、さらに目や望遠鏡で見たりするという実感があまりないため難しく感じられたことでしょう。

今月からはいよいよ身近な「太陽系」の情報となりますので、今までよりはわかりやすくなりそうです。これからは太陽という恒星の詳細な調査はもちろんですが、太陽が引き連れている惑星やその衛星たちについても、細部にわたりゆっくり勉強してみようと思います。

[太陽系-1]宇宙論のなかの太陽系の歴史

世界の起源と終末という思想は有史以来常にありましたが、太陽系という概念ができたのは近世以降であるため、これらを太陽系の存在と結びつけて考えることはほとんど皆無でした。太陽系の形成と進化の理論への第一歩は、太陽が中心にあり地球がその周りを回っているという地動説を広く受け入れることでした。この考え方は1000年間も異端の扱いでしたが、17世紀末にやっと世間に受け入れられるようになりました。「太陽系」という言葉を用いた最初の記録は1704年に遡ります。

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コペルニクスの地動説の概念図

A.アーミティジ/奥住喜重訳『太陽よ、汝は動かず-コペルニクスの世界』1962年 岩波新書 p.145

現在の太陽系形成の標準的な理論の原型である星雲説は、18世紀にエマヌエル・スヴェーデンボリ、イマヌエル・カント、ピエール=シモン・ラプラスらによって提唱されましたが、当初は受け入れられませんでした。最も大きな批判は、惑星と比べて太陽の角運動量が小さいことを説明できない点でした。しかし1980年代初頭に、若い恒星の周りに星雲説で予言された冷たいガスと宇宙塵の円盤が見つかると、再び認知されるようになってきたのです。

太陽がいかにして進化を続けるかを理解するには、太陽のエネルギー源に対する理解が不可欠でしたが、アーサー・エディントンによるアルベルト・アインシュタインの相対性理論の解釈によって太陽のエネルギーは核で行われる原子核融合*に由来することが明らかとなりました。1935年にはエディントンはさらに他の元素も星の内部に由来することを示唆しました。フレッド・ホイルは、この仮定に基づき、赤色巨星と呼ばれる進化の最終段階を迎えた恒星は核の中で水素とヘリウムより重い元素を生産していると唱えました。赤色巨星の表層が吹き飛ばされるとこれらの元素が露出し、他の恒星系を作るためにリサイクルされるということです。(*核融合については2月号「恒星-1」をご参照ください)

[太陽系-2]原始太陽の形成

約46億年前、ガス雲の収縮が起こっている宇宙の領域の一つで太陽系が形成されました。この領域は直径7,000天文単位(1天文単位≒1.5億km)から2万天文単位で、質量は太陽よりわずかに大きい程度でした。組成は現在の太陽とほぼ同じで、収縮したガス雲の質量の98%はビッグバンから1億年以内に合成された水素やヘリウムに痕跡程度のリチウムでした。残りの2%は第一世代の恒星の中で合成された重元素です。それらの恒星は寿命が尽きると、重元素を星間物質として放出しました。

角運動量保存の法則により、星雲は収縮時より速く自転します。星雲内の物質の密度が高まると、原子が頻繁に衝突し、運動エネルギーが熱に変換されます。最も密度が高くなる中心は、周囲の円盤と比べかなり温度が高くなります。10万年程度経つと、重力、ガス圧、磁場、回転等の拮抗した力により、直径200天文単位以下の原始惑星系円盤が形成され、その中心に温度と密度が高い原始星が形成されま す。

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原始惑星系円盤

生まれて100万年程度の若い星のまわりにちりとガスからなる円盤状の構造がみえる。すばる望遠鏡がとらえた上の画像では、従来考えられていたような均一で平らな円盤ではなく、渦巻型をしていた。右の画像は渦構造(腕)をわかりやすくしたもの。この理由については、円盤自体が重いため円盤の密度にムラができ、回転の影響で渦巻型になったと考えられている。

進化のこの段階では、太陽はおうし座T型星のような星だったと考えられています。観測の結果、おうし座T型星は太陽質量の0.001倍から0.1倍の質量の原始惑星系円盤を伴っていることが分かっています。この円盤はハッブル宇宙望遠鏡での観測によると数百天文単位の範囲に広がっています。温度はせいぜい数千ケルビンと低い温度です。5000万年以内には太陽の中心の温度と圧力は十分高くなって水素の融合が始まり、静水圧平衡に達するまで重力による収縮が続きました。これは、太陽が主系列星と呼ばれる段階に入ったことを意味します。前回以前にもお話をしましたように、主系列星とは、内部で水素の核融合によりヘリウムを生成することでエネルギーを生産している恒星のことです。太陽は今日でも主系列星の一つです。

[太陽系-3]惑星の形成

様々な惑星は、太陽の形成後に残ったガスや宇宙塵の円盤から形成されたと考えられています。今日最も広く受け入れられている仮説は、降着円盤モデルとして知られているものです。このモデルでは、まず宇宙塵が太陽の周囲の軌道を回り始め、次々に衝突して1kmから10km程度の微惑星という塊を作ります。その後数百万年間は衝突により、1年あたり数cm程度の速さで成長します。

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太陽系形成標準理論(林モデル)

<地球型岩石質惑星>

太陽から4天文単位以内の内部太陽系では、水やメタン等の揮発性の分子が凝縮するには温度が高すぎるため、金属(鉄、ニッケル、アルミニウムなど)やケイ酸塩などの融点の高い物質が微惑星を形成し、岩石質の惑星(地球型惑星:水星、金星、地球、火星)になりました。これらの物質は宇宙では珍しく、星雲中には0.6%程度しか存在しないため、地球型惑星はそれほど大きく成長できませんでした。岩石質の原始天体(惑星の胚)は地球質量の5%程度まで成長し、その後は衝突合体を繰り返して大きくなりましたが、太陽形成後10万年程度で集積が止まりました。

<木星型巨大ガス惑星>

巨大ガス惑星(木星型惑星:木星、土星、天王星、海王星)は、火星軌道と木星軌道の間の揮発性物質が凝結して固体になる凍結線よりも外側で形成されました。木星型惑星を形成する氷は地球型惑星を形成する鉄やケイ酸塩よりも豊富にあり、宇宙に最も多量に存在する水素やヘリウムを捕獲するのに十分な質量を持つに至りました。凍結線より外側の原始天体は、300万年の間に地球質量の4倍程度になったのです。今日では、4つの木星型惑星の質量を合計すると、太陽の周りを回る天体の全質量の99%にもなります。木星が凍結線のすぐ外側に存在することは、偶然ではないと考えられています。凍結線上には蒸発した大量の水が溜まるため、圧力が低い領域が形成され、軌道上を回っている宇宙塵を加速するとともに太陽の方向への動きを押しとどめます。この効果により、凍結線外の物質は5天文単位以上太陽に近づくことができなくなります。これによって物質の集積が加速し、地球質量の10倍程度の塊ができます。これが周囲の水素を取り込み、1000年程度で地球質量の150倍まで成長し、最終的には地球質量の318倍になりました。土星は、木星より数百万年後になって形成されたため、周囲に利用できるガスが少なく、木星と比べて若干小さくなりました。

<天王星型氷の惑星>

若い太陽の様なおうし座T型星タイプの星は、安定した古い星に比べて、強い恒星風が吹きます。天王星と海王星は、木星と土星ができた後、太陽風が強く吹き始めて、ガスや宇宙塵の多くが散逸してから形成されたと考えられています。結果として、これらの惑星が獲得できた水素やヘリウムは1地球質量に満たない程度となりました。天王星や海王星はしばしば明確な核を持たないとも言われ、氷の惑星(天王星型惑星)と呼ばれています。なお、冥王星や近年発見された小惑星は惑星型に分類されません。

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現在まで確認されている8つの惑星と5つの準惑星

[太陽系-4]太陽系の位置

太陽系とともに、宇宙の概念で有名なのが銀河なので、我々が住んでいる天の川銀河(銀河系)の中の太陽系の位置を確認してみましょう。

天の川銀河の直径は約10万光年で、kmに直すと、約100京km。太陽系の半系を1.575光年(15兆km)とすると直径は、約30兆km になります。したがって、通常の画像では天の川銀河の中でもほとんど見分けがつきません。

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天の川銀河(銀河系)の中の太陽系概略位置

太陽系は、銀河核を中心に約3万光年の軌道を単独で回っています。その速度はおよそ秒速220kmであり、一周に要する期間、銀河年はおよそ2億2000万年から2億5000万年である。その形成以来、太陽系は銀河系(天の川銀河)を少なくとも20周したことになります。

地球の化石の記録に残る周期的な大量絶滅の原因は、太陽系の公転のためであると多くの科学者が推測しています。ある仮説では、太陽系の鉛直振動により銀河面を横切ると推測しています。太陽の軌道が銀河の円盤の外に出ると、銀河潮汐力の影響が弱くなる。これが2000万年から2500万年の周期で繰り返されます。

しかし、太陽は現在銀河面に近付いており、前の大量絶滅は1500万年前であったこととの矛盾を指摘する科学者もいます。太陽の垂直位置だけで大量絶滅を説明できないとして、太陽系が銀河の渦巻腕を通過する時に大量絶滅が起こると唱える人もいます。渦巻腕にはその重力でオールトの雲を歪める多くの分子雲が存在するだけではなく、寿命が比較的短く強烈な超新星爆発を起こす青色巨星の密度も高いのです。

[太陽系-5]太陽系進化の測定と時系列

太陽系の形成に関する時期は、放射年代測定によって決定されます。太陽系自体は約46億年前にできたと見積もられています。これまでに発見された地球上の最古の鉱物は約44億年前にできたと考えられますが、浸食、火山、プレートテクトニクス等により地球の表面は常に更新されているため、このような古い鉱物が見られるのは稀です。太陽系の年齢を推定するためには、太陽系の形成初期に生成した隕石が用いられます。キャニオン・ディアブロ隕石等、ほとんどの隕石は46億年以内に形成されており、太陽系は少なくともこの年より古いことが示唆されます。

他の恒星のディスクの研究も太陽系の形成年代の測定に生かされます。100万歳から300万歳程度の恒星はガスに富んだディスクを持っていますが、1000万歳以上の恒星のディスクにはガスはほとんどなく、木星型惑星はその頃まで完成したと考えられます。

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本章6(恒星-1)でも勉強しましたように、太陽はおおよそ誕生から100億年後(現在から50億年後)に赤色巨星となり、主系列星ではなくなります。そしてやがては白色矮星となり、その役割を終えることになります。時系列でみると、現在はちょうど太陽系寿命の中間あたりになります。

このような太陽系の安定時期に生命を育んでいる私たちは、大変ラッキーな生き物であるともいえるのではないでしょうか。

今月は「太陽系」全体についてのお話となりましたが、次回からは「太陽」から始まり、一つ一つの惑星や衛星についてのお話となってゆきます。

 

<参考・引用資料>

「知識ゼロからの宇宙入門」渡部潤一、渡部好恵 、ネイチャープロ編集室 発行元:幻冬舎

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「宇宙の秘密がわかる本」宇宙科学研究倶楽部 発行元:株式会社学研プラス

「NASAホームページ」

「ウィキペディア」

「国立科学博物館」ホームページ