希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

おもしろい宇宙の科学(13)<太陽系-その5(金星)>

先月は「火星大接近」という大きな宇宙ショーがありましたので、急きょ「火星」のお話になりましたが、今月は再び太陽に近い惑星の順に戻します。最も太陽に近い惑星「水星」はすでに7 月号で取り上げましたので、今月は次に太陽に近い惑星である「金星」について調べてみました。

[金星-1]太陽、月の次に明るい惑星

金星が宵の空にあるときは、日が沈んだ後どの星よりも先に輝き始め、明け方の空にあるときは、最後まで輝きつづけます。一番明るいころの金星は、視力がよい人なら白昼でも肉眼で見えるほどです。

太陽と月を除けば、金星より明るい天体は存在しません。肉眼で観察できる時期の金星はおよそ-4等級で、明るいときには-4.7等にもなります。参考までに、ほかの主な惑星の最大光度は火星が-3.0等、木星が-2.8等、水星が-2.4等、土星が-0.5等。全天一明るい恒星、おおいぬ座のシリウスは-1.5等ですが、金星の最大光度はその20倍近くもあるのです。かつてその明るさと美しさは、ローマ神話に登場する美の女神ビーナス(Venus)に例えられました。現在も金星は英語でVenusと呼ばれています。

おもしろい宇宙の科学-画像0901

[金星-2]明けの明星、宵の明星

太陽系の8惑星は内側から順番に水星-金星-地球-火星-木星-土星-天王星-海王星です。第2惑星・金星は地球のすぐ内側を回っているので、地球から見て決して太陽の方向と反対方向に来ることはありません。金星が明け方か夕方にしか見えなくて、真夜中に観測できないのはこのためです。

金星の動きをもう少し詳しく追ってみましょう。金星が地球から見て太陽と同じ方向にあるときを「合」といいます。合の時には、地球からその姿を見ることはできません。そして、太陽の向こう側での合を「外合」、こちら側での合を「内合」といいます。

さて、内合を過ぎた金星は太陽の周りを反時計回りに移動し、太陽の西側に見えるようになります。このとき、地球からは日の出前の東の空に見えるようになります。金星は太陽から徐々に離れていきますが、ある点を境に今度は太陽に近付き始めるようになります。この点にきたときを、「西方最大離角(太陽の西側で起こる最大離角)」といいます。金星は明け方の東の空で“明けの明星”として輝く姿を見ることができます。

西方最大離角を過ぎた金星は、しばらくは朝焼けの空に残って見えていますが、その後は急加速しながら太陽に近付いていきます。そして、「外合」を迎えます。地球の動きを加味して考えれば容易に理解できます。やがて金星は太陽の東側に姿をあらわします。そして「東方最大離角」のころには夕方の西の空に輝くようになるのです。このころの金星が“宵の明星”と呼ばれます。

おもしろい宇宙の科学-画像0902

[金星-3]分厚い雲と温室効果

太陽系の惑星で一番地球に似ている星、というと火星を挙げる方が多いのではないでしょうか。かつて液体の水が豊富に存在した強い証拠がありますし、生命の痕跡があるとする研究者もいます。北極や南極は氷で覆われていて、その面積は季節と共に変動します。しかし、火星の半径は地球の半分、質量は10%しかありません。

これに対し、金星の半径は95%、質量は80%と、地球にとても近い数字です。距離の上でも近い両者は、「兄弟星」と呼ばれることもありました。にもかかわらず現在、金星よりも火星の方が地球に似ているという方が多いのは、探査機などの活躍で金星の過酷な環境が明らかになったからでしょう。

生まれたばかりの金星と地球は、お互いによく似ていたと考えられています。どちらも高温で、水蒸気、二酸化炭素、窒素、塩素、硫黄などからなる原始大気で覆われていました。その後地球では気温が下がり、液体になった水が海を作り、二酸化炭素が海洋に溶け込んで石灰岩として取り込まれた結果、窒素を主体とした大気ができあがったのです。

ところが金星は太陽に近かったため、温度が下がることはありませんでした。水蒸気は太陽の紫外線で分解されてしまい、二酸化炭素97%、窒素3%、90気圧もの大気が残されました。濃硫酸の厚い雲で覆われて、太陽光の80%近くを反射しています(金星が明るく見える理由の1つです)が、二酸化炭素の強烈な温室効果によって地表付近は500℃もの高温に保たれています。

おもしろい宇宙の科学-画像0903

金星が地球どころか、ほかのすべての惑星と異なるのは、逆向きに自転している点です。しかも、自転周期は243日(以下、「日」は地球における1日のこと)と、225日の公転周期よりも長いため奇妙なことになります。金星では日の出から日の出までの時間、つまり「1日の長さ」は、自転周期よりはるかに短い117日間。しかも日は西から昇ります。とても想像できない世界です。もっとも、分厚い雲のおかげで、そもそも太陽を見ることはできませんが・・・ 。

おもしろい宇宙の科学-画像0904

[金星-4]金星の地形と蒸発した海

地球と金星の大きなちがいは海です。金星にもかつて海がありましたが、地球よりも太陽に近いために気温が上昇しすぎて蒸発してしまいました。

大気上空では、太陽光によって水蒸気は酸素と水素に分かれます。水素は宇宙空間へと放出されるために、二度と海が復活することはありませんでした。

金星表面には、クレーターがあまりありません。これは、表面が火山活動などにより、たえず新しくなったこと、また濃い大気に原因があるようです。濃い大気に邪魔されて阻石は砕け、小さなものは地表にくるまでに燃えつきてしまいます。クレーターも円形ではなく、砕けるためにクレーターが連続して存在するチェーン・クレーターとなっている場合が多いのです。

おもしろい宇宙の科学-画像0905

さらに、金星には平原が多数あります。地表平均から2km以上の高原は全体の13%、代表的なものにがあります。アフロディア大陸には、金星アフロディア大陸 特有のコロナという直径数百kmの円形構造が200個以上あります。この地形は巨大なマントルの上昇流であるプルームによってできたようです。プルームの上下動によって表層の地殻の動きが左右されるプルーム・テクトニクスというメカニズムが、金星では強くはたらいていると考えられています。

おもしろい宇宙の科学-画像0906

[金星-5]金星の生物の可能性

前回の「火星」の話では、火星の氷の下に“微生物が存在するかもしれない”ということでした。それでは「金星」の生物の可能性はどうでしょうか。

 

1952年、アメリカのジョージ・アダムスキーはカリフォルニアのモハーヴェ砂漠で人間によく似た姿をした金星人に遭遇したと証言しました。彼によれば金星人は褐色の肌をしており、吊り上がった灰色の瞳と広い額が特徴的だったといいます。アダムスキーによると、金星人は「オーソン」という名前で、テレパシーを使ってコミュニケーションを取ってきたとも話しました。しかし、現在ではアダムスキーの証言を信じている人はいないでしょう。1960年代以降、惑星探査機の調査により金星は深海のような気圧と超高温の気温を持つ灼熱の星だということが明らかになりました。このことからアダムスキーが語ったような人間に似た知的生命体は存在を否定されています。仮に金星人が存在するとしても人類とは似ても似つかない異形の姿をしているでしょう。

おもしろい宇宙の科学-画像0907

現在の金星は生物が存在するにはあまりに過酷な環境です。気圧は900メートルの深海に等しく、気温は鉛さえ溶かせる500℃に達します。しかし、NASAの研究によって太古の金星は生命が存在可能性な環境だったことがわかっています。金星が形成されてから20億年頃までのあいだは金星には海があり、気温も現在の地球より少し低い温暖な気候でした。研究者は生物の発生には非常に短い時間であるとしながらも、この20億年のあいだなら生命が存在していても不思議ではない環境だったとしています。

 

また、現在の金星でも生物が存在する可能性は残されているといいます。2009年、金星の上空50キロメートル付近では比較的温度が低く、気圧も低いため浮遊型の微生物であれば生息可能だという研究結果が出されました。生物の生存可能性を表す指数を測定する方法では微生物は地球と同レベルの可能性という結果になりました。また、1982年に探査機が撮影した写真にはサソリのようなものが映り込んでいたといいます。ロシア科学アカデミー宇宙科学研究所の天文学者は「金星に生物がいるはずがないという常識を忘れるならば、写真に写っているのは生物としか考えられない。」と語っています。

 

さらに、金星の雲に生命がいる可能性が指摘されたのは、2015年JAXAが打ち上げた金星探査機「あかつき」が撮影した金星の紫外線画像に、謎の黒いスポットが写っていたことが発端でした。ポーランド・ジェロナ・グラ大学のグルゼゴルズ・ソウィック教授によると、これは光吸収性を持つ地球のバクテリアに似た生物によって引き起こされているのではないかというのです。たとえるなら湖や池に繁殖する藻、いわば、宇宙藻が金星の大気中に広がっているのではないかというわけです。

おもしろい宇宙の科学-画像0908

おもしろい宇宙の科学-画像0909

NASA研究員で米ウィスコンシン大学メディソン校の惑星科学者サンジェイ・リマイェ博士は、将来的にNASAが計画中の「Venus Atmospheric Maneuverable Platform(VAMP、金星大気操縦可能プラットフォーム)」から金星の雲を採取し、金星生命の有無を調査するとのことです。

「地球には酸性の環境下で生き延びる生命が存在します。それらの生命は二酸化炭素を食べ、硫酸を生産しています」(リマイェ博士)

過酷な環境をものともせず繁殖する微生物が地球にいるのなら、将来、金星でも似たような生命が見つかってもおかしくないでしょう。

 

以上、今月は太陽に2番目に近い惑星「金星」についての話でした。寒く冷たい火星だけでなく、灼熱の金星にも生物(微生物)が存在している可能性があるとは驚きですね。

次回は太陽からの距離が金星の次に遠い私たちの「地球」についての話を予定しています。

 

<参考・引用資料>

「知識ゼロからの宇宙入門」渡部潤一、渡部好恵 、ネイチャープロ編集室 発行元:幻冬舎

「徹底図解 宇宙のしくみ」編集・発行元:新星出版社

「宇宙の秘密がわかる本」宇宙科学研究倶楽部 発行元:株式会社学研プラス

「NASAホームページ」

「JAXAホームページ」

「ウィキペディア」

「AstroArts」

「TOCANA」