国連のIPCCや環境活動団体、そしてあらゆるメディアにより現在の地球は温室効果ガス・CO2により温暖化の脅威の真只中にいることになっています。しかし、本テーマの14回にわたる様々な角度からの検証により、「CO2による温暖化」も「温暖化の脅威そのもの」も真に科学的に裏打ちされた事実ではなく、不完全なシミュレーションによる仮説の域を出ないことがわかってきました。
これからは、今月と来月号にかけて過去14回にわたってお話をしてきました「地球温暖化と温室効果ガスの検証」のまとめに入りたいと思います。
まず今月は本テーマで取り上げましたさまざまな検証結果とその考察について、大きな援護射撃となる重要なウェブ記事全文をご紹介します。文章はそのまま引用させていただきましたが、補足として図表の一部と文章を本テーマで過去に使ったものを追加させていただきました。なお、記事の全文引用については、出典元のNPO法人/国際環境経済研究所様および著者の先生方のご了解をいただいています。
「地球温暖化防止」運動の暴走
-温暖化は殆ど止まっているにもかかわらず-
赤祖父 俊一/田中 博 (アラスカ大学国際北極圏研究センター/筑波大学計算科学研究センター)
*引用元:IEEI(国際環境経済研究所)https://ieei.or.jp/
ウェブ記事 https://ieei.or.jp/2020/06/opinion20060201/
■はじめに
地球温暖化防止運動が暴走している。グテーレス国連事務総長や16歳の少女までを繰り出し、人類は将来について一つの分岐点まできているとしている。ところが、炭酸ガスの放出量は依然として急増しているにもかかわらず、しかもコンピュータ-計算では2000年から20年の間にすでに0.6~1.2℃上昇することになっているにもかかわらず、観測された温暖化はモデル予測ほどには上がっていない。こんな矛盾と不確定さにもかかわらず地球温暖化が世界の大問題とされている。ところが現在、地球温暖化がモデル予測ほどには進行していない事さえ公表されていない。この複雑な事情を解説しよう。この問題はもう一度本格的な学問に戻すべきである。
■IPCCとは
もともと、この国際的活動は英国のサッチャー首相の時代に、英国の気象学者達が先頭に立ってできたIPCC (International Panel on Climate Change) から始まっている。当時、この問題についての雰囲気を示す政治マンガが英国の新聞に掲載されていたが、テレビの前で「地球温暖化」と叫び、小躍りしている学者が描かれていた。人類の将来の分岐点に来ているという現在の雰囲気とは全く異なっていた。彼らにとっては、地球規模の「大問題」を米国や日本に先駆けて探し当てたと思ったということであったろう。
IPCCは気候変動の国際学会ではない。彼らが招集したのは、世界各国の2000人以上の気象学者である。IPCCは気候変動を謳っているが、参加した気象学者は、気候学者ではなかった。気候学者は例えば、過去の気候を木の年輪や氷のコアーなどを使って研究する地味な研究者であるが、気象学者は将来の天気予報と、それに関連した大気現象を研究する研究者である。気象学者と気候学者は異なる。両者の研究方向は、未来と過去と全く反対方向を向いている。実はこのことが現在の暴走の原因の一つである。これを説明しよう。
■自然変動と人的変動
それには、まず温暖化の原因には自然変動と人的変動とが同時に起きていることを理解していただきたい。これに反対する学者はいないはずである。現在起きている気候変動には、常に自然変動と人的変動が一緒に起きている。自然変動とは、人間活動に関係なく地球上で起きる温暖化または寒冷化のことである。一方、人的変動とは、人間活動によってもたらされた炭酸ガスなどによる温暖化のことである。したがって、温暖化への炭酸ガスの影響を正しく研究するには、観測されたデータから自然変動を取り除かなくてはならない。 IPCCのように、現在起きている温暖化のほぼ全てを人的変動としてきたのは大きな過ちである。
長年の自然変動は主に気候学者の研究対象である。人的変動は 気象学者の研究によるが 彼らは 未来の気温を計算で推定することに興味があり、自然変動には全く無関心である。
自然変動と人的変動を区別するには、自然変動の性質を研究している気候学者が、人的影響のなかった過去の変動から自然変動の性質を知ることから始まる。産業革命以前の気候変動は、殆ど自然変動としてよい。その後の気候変動も、大気中の炭酸ガス濃度の変化と気温変化を調べれば、産業革命以後の気温変化の中から自然変動が推定できるはずである。最初IPCCはそれをせず、ほぼ全ての変動を人的変動として出発した。
IPCCが集めた2000人以上の世界の主な「気候」の研究者は、大部分が気象の研究者であった。本格的な気候学者は全世界から集めても100人程度であろう。したがって、IPCCの大部分が気象学者であった。その良い証拠に、IPCCが旗印として使っていたホッケースティックというあだ名が付けられている図がある(全球平均気温の変化がホッケースティックの端のように、大部分は真っ直ぐで変化なく100年ほど前から急に上昇したとするもの)。この図はデータを捏造したものであり、その捏造された研究を旗印の下に、2000人以上の専門家が、現在起きている地球温暖化は「very likely」に炭酸ガスによるものであるとして、一致 (consensus) した。したがって、この捏造された図を信じて参加したIPCCの研究者の大部分は、気候学者ではなかったことが分かる。本格的な気候学者であれば、少なくとも、地球は1万年前(米国ではコロラドまで氷が押し寄せた自然変動の大氷期の直後)には数千年間、今より暖かかったこと、1000年頃の温暖期は現在と同程度に暖かかったこと、1200年頃から1850年まで続いた「小氷期」があった事などを知っているはずである。小氷期にはロンドンのテムーズ河が冬季に凍っていて、そこに市場などができていたこと、農作が困難であったこと、そしてその後、その小氷期から回復しつつあることも知っていたはずである。
小氷期があった事は、極めて重要である。なぜなら、地球の温度は1850年頃から2000年頃まで 高い精度で直線的に上昇(すなわち温暖化)してきたからである。「産業革命が始まった頃から炭酸ガスが増えたではないか」と言う者がいるが、当時の炭酸ガスの量は、当然現在の量と比較して全く微量であった。炭酸ガスの急増は、その100年後の1946年から始まった。IPCCの「気候」学者等は、かつて小氷期があった事、そしてそれ以降、温暖化は直線的に起きたこと、すなわち自然変動には無関心であったし、現在もそうであり、将来にしか興味がない。小氷期はヨーロッパでの現象であったなどとするIPCCの学者がいたので、筆者等は膨大なデータを調査して、それが地球規模の現象であったことを示した。IPCCはこの寒冷期からの回復(気温上昇)であった自然変動を「very likely」に炭酸ガスによるとして、その影響を過大評価してしまったのである。この誤りは現在でも直されていないし、計算で予測することしか興味がない。
■メディアの参入
IPCCが炭酸ガスによる地球温暖化を最初に提唱した当時、世界は比較的に平和であったようである。したがって、地球の「大危機」を唱えるIPCC はメディアの注目を集め、地球温暖化は彼らのニュースの好材料となった。筆者の一人がアラスカ大学国際北極圏研究センターの所長を務めていた頃、温暖化は北極圏で最も激しく現れるはずであるで、その証拠が欲しいと世界各国のメディアが頻繁に研究センターに訪れた。例えば、地球温暖化のために永久凍土が融けて、フェアバンクスの家が潰れていると聞いたので、その写真を撮りたいと言う。そんなことは起きていないと言うと、「お前は2000人以上の専門家が一致したIPCCの見解に反対するのか」とのこと、そして「温暖化の記事はもうできている。写真だけもらえればよい」、というようなものであった。家が潰れるのは、永久凍土の上に直接家を建てると、暖房により永久凍土が融け、底が抜けることによる。しかたなく、彼らは次に氷河の末端で氷が崩れる動画を撮りたいと言う。「氷河は氷の河ですよ。氷が流れ氷河の末端で崩れ落ちるのはあたりまえ」と言っても、聞く耳を持たない。テレビで温暖化の話題になると、最初に出てくるのは、この海岸に突出した氷河の末端で崩れ落ちる氷塊の映像である。
「氷河は後退しているではないか」と言う者もいるので、世界各地(南北両半球)の氷河の後退を調べて、ほとんど全部が1850年頃より後退を始めていたことが分かった。温暖化は小氷期から回復した当時から始まっていたのである。IPCCが温暖化の証拠の一つとして示しているヒマラヤの氷河も、1800年頃から後退が始まっていたが、それに気がつかなかったのである。ヨーロッパアルプスでは、氷河は気候変動に伴って何回も発達・後退を繰り返していた記録がある。また氷河に出かけ、「氷河の上を水が流れている。大変だ」という記事もあった。これは夏には当たり前の現象である。
アラスカのベーリング海に面した小島の沿岸が侵食されている。温暖化で海氷が少なくなり海岸が海氷で守られないため崩れ、家が海に落ちているとして、世界各国のメディアが出かけて行き、 温暖化の最も良い例として写真を撮っていたが、原住民が驚いていた(もっとも、彼らはその後海岸侵食が炭酸ガスによるとメデイアから知らされ、政府に賠償を請求した)。海岸線の変化は海流の変化でも起きる。筆者の一人は米国連邦議会上院 でその対処等について証言を依頼され、自然変動の可能性が高いこと、特に日本の台風が温帯低気圧に変化し、アラスカまで来て大嵐となり、侵食が起きたことも証言した。北極海の氷の面積は米国と日本の人工衛星の観測(世界中の学者が使っている日本の素晴らしいデータ)によると、現在でも1975 年頃と殆ど変わらない。厚さは全く別の問題になるので、ここでは言及しない(アラスカ大学国際北極圏研究センターは、6か国の砕氷船と一緒に大西洋の海流と氷の厚さの関係について研究をしている)。このような無知のために誤った記事が次々と新聞に載っていた。数えればきりがない。北極について知識のない市民はこの誤った報道を信ずるより仕方なかった。
IPCCの代表は、数年ごとに温暖化についての研究結果をまとめて報告してきたが、「2000人の専門の研究者の一致」した見解として発表するので、メディアはそれを「神のお告げ意見」のように受け取り、記事にしてきた。彼らにとっては、地球温暖化問題は絶好な取材であった。現在のCOP(条約締約国会議)は、それをさらに助長している。 反対意見は全く無視されている。
■「気候」学者の研究
IPCC設立当時、スーパーコンピュータが容易に使えるようになっていた。そのためIPCCの気象学者の間では、彼らの気象の基礎知識を使って炭酸ガスの増加による将来、即ち2100年までの気温上昇を予測する研究が爆発的に流行して行われてきた。世界各国の政府官庁は、温暖化対策本部を作り(日本では外務省にも地球温暖化対策部ができた)競争してその研究資金を提供した。そして、計算結果の温暖化による海面上昇、北極海の海氷の減少をはじめ、多くの研究が続出して、その結果が「危機的」であればあるほど多くの研究資金が出た。そして、それがまたメディアの材料になった。この状況は現在でも続いている。
ここで、地球温暖化の観測結果と、多くの研究者によるシミュレーション結果を比較した例をみてみよう。第1図はテキサス州のハンツビル大学のクリスティ(J. R. Christy) によるもので、数多くのコンピュータ・シミュレーションによる1975年から2020年までの気温上昇を推定した結果に、人工衛星と気球による観測を加えたものを示してある。世界各地で点々と存在する観測所の気温とは別に、彼は人工衛星で地球上を隈なく計ったデータを使っている。この図は、米国連邦議会上院の公聴会で彼が発表したものである。(筆者の一人も3回、連邦議会上院公聴会で証言と研究発表を依頼されたが、厳しい質問もあった)。彼の図によると、対流圏中層の観測結果では2000年から2020年までの20年間に気温は約0.1~0.2℃上昇しているが、シミュレーションの結果では0.2℃から1.0℃上昇していることになっている。わずか20年でこんな大きな差がある。そんなことで100年後の気温など正確に推定できるはずがない。IPCCはその平均値(赤線)をとって、この20年間で約0.4℃上昇としているが、そのばらつきは大きく、単純に外挿すると2100年には1.0℃から5.0℃上昇することになる。IPCCの最初の頃の計算では2℃から9℃以上のばらつきがあった。そしてそれを「一致」として表現していた。
研究者にとっては自分の信じている炭酸ガスの増加量と多くの仮定のもとに計算しているが、各々の数字は別としても、こんなにひどいばらつきがあるのである。IPCCはこの意味のない(数値的計算値の平均は意味がない。一番低いのが正しいかもしれない)中間値、平均値などの結果から、2000人以上の専門家が「一致」した見解であるとしている。他の多くの総合研究でも同様の計算結果が発表されているが、このひどいばらつきは大体同じである。こんな不一致をもって「一致」としているのである。市民はこれを一致と理解している。このような根拠をもとにして、近年の温暖化を「世界重大問題」として取り上げてよいのであろうか。
このクリスティの図で分かるように、コンピュータによる将来の気温上昇は、十分に信頼できる段階に達していない。我々の知識はまだまだコンピュータで2100年の気温を推定できる段階ではない。IPCCの決定的誤りは、自然変動を無視して炭酸ガスによる温暖化を過大評価したことが元になっている。IPCCもCOPもどうしてこの 誤りを無視できるのか。1975年から2000年までの25年間に0.5℃の温度上昇があったが、それをかつてないほどの上昇であるとして、これを「very likely」に炭酸ガスによるとした。実は同様の上昇が1940年代にもあったのに、十分理解されていない。 それはすでに述べた1850年からの直線的な温度上昇の上に、準周期的変動としての自然変動が乗っており、1975年から2000年までの25年間にこの両者が重なったため、自然変動として少なくとも0.4℃上昇した (実は1960年代に炭酸ガスが増えたにもかかわらず気温が下がったことは忘れられている)。したがって、炭酸ガスによるこの間の上昇はせいぜい0.1℃程度であったと推定される。
少々専門的になるが、炭酸ガス100ppmの増加に対して、気温上昇は0.2℃程度であるが、コンピュータ・シミュレーションによると、それが1.0℃となっている。つまり、温暖化は少なくとも5 倍に過大評価されている。この過大評価については、自然変動として、他に準周期的変動(太平洋準振動など)があるが、振幅が大きいにもかかわらずあまり研究されていない。このように、地球温暖化問題はまだ学者の間で議論している段階であり、一致して世界重大問題として騒ぎ立てる問題ではない。メディアが取り上げるべき問題でもない。IPCCは最初からこの問題を政治問題としたことが、現在の暴走の大きな原因である。ロンドンでなく京都に会議を持ってきた(京都議定書)のも政治的であろう。日本は、国際的な議決に忠実に従うとされてきたことによるのであろう。
メディアや一部の学者は、反対意見を持っている者たちをDenier、懐疑派、異端者などと呼んだ。IPCCの温暖化研究は誤っているとして疑う者に対しては、2000人の専門家の「一致」を盾に、これらの懐疑論者の研究を信頼に足るものではないとし、反対意見を封じようとしてきた。討論は学者の生命であるにもかかわらず、である。この時点ですでに地球温暖化研究は学問ではなくなった。
■温暖化が止まった
ところが、大部分の気象学者が全く予想しなかったことが起きた。2000年頃から15年もの間、温暖化が殆ど止まってしまったのである。実は地球温暖化が炭酸ガスによるとする主張に疑問を持ちはじめた学者もいた。アメリカの唯一の全科学学会(AAAS)誌で、ケール(R. A. Kerr) はすでに2009年に、一部の研究者は気温上昇が止まっていることに注目していると発表した (Science, 326, Oct. 2, p 28) 。しかし ‘What Happened to Global Warming? Scientists Say, Just Wait a Bit.’ として片づけられてしまった(第2図にケールの記事を示してある)。 IPCCの研究者間で交わされたe-mailの一部がリークしたようで、温暖化が止まっていることに ‘頭が痛い’ というようなものがあった。サッチャー首相きもいりでできた英国のハドレー気候研究センターでも、気温上昇が止まり、逆にわずかながら降下の傾向があることを2012年には知っていた (HadCRUT4)。しかし研究者等は、少し待てばまた上昇が始まると信じ「just wait a bit」としていた。2015年のエルニーニョ現象で、研究者等の期待通りに気温は一時上昇したが、その後はまた低下している。
温暖化が止まったことを研究者等のあいだでは「一時停止:hiatus」という言葉を使って表現している。すなわち、Scienceの記事でも示したように、やがて気温はモデルによる予測通りに上昇すると信じて疑がわない。炭酸ガスが現在も急増しているのに気温上昇が停止していることから分かるように、ほとんどの「気候」学者のスーパーコンピュータによる予測が誤っていたにもかかわらず、である(炭酸ガスの影響の過大評価)。これはメディアにとって例えhiatusとしても重大なニュースであるべきであるが、今まであまりにも温暖化を騒ぎ過ぎたため、沈黙、無視しているのではないか。
一方、この学会誌の編集長のケネディ (D. Kennedy) は2007年に、‘Climate: Game Over’ (Science,325, July 27) として、反対論文は受理しない方針を表明した。学会誌としてあるべきことではない。討論は学者の生命であることを強調したい。
■温暖化問題の暴走
更に、「地球温暖化」が「気候変動」と呼ばれることになってからは、多くの自然現象、気候変化とそれによる災害までが、炭酸ガスによることになってしまった。環境破壊を温暖化にこじつける場合も多い。これもメディアにとっては「温暖化」としての好材料になった。 もともと「異常気象」という言葉があったが、それが少なくとも10年(または20年くらい)続くと、異常気象は気候変動と呼ばれる。寒い冬が10年以上連続した場合、冷夏で稲作が10年以上減産になった場合などである。これに加えて、このような災害では、気温上昇と被害とが混同され報道されている。米国NOAAの研究によると、竜巻やハリケーン(台風と同じ)は、この数10年の間減少しているが、被害は急増している。それは、例えば昔から原野を走っていた竜巻が、最近では拡大する郊外にぶつかることが多くなったためもある。海岸における人口増加も、大嵐による侵食被害を急増させた原因である。
■おわりに
温暖化の危機を重大な問題として唱える人達の間で、2台の自動車を1 台に減らすという話を聞いたことがない。電気自動車に取り替えると主張する人たちは、そのための電気がどのようにして作られるか考えたことがあるだろうか。当分は石炭に依存することになる。飛行機の数は増える。または乗る回数を減らしたという話も聞いたことがない。牛はメタンガスを出すので、牛肉を食べないようにしようとのことであるが、本人と世界の総人口が炭酸ガスを放出していることに気が付かないのであろうか。何もせず、「温暖化は大変である」と騒いでいるだけで、世の中の大勢に沿っていると認められる。もっと身近なプラスチックは、本人がその防止のため行動しなくてはならない。便利なものを使わなくすることは困るので、地球温暖化のような世界的大環境問題にならない。
筆者等にとって、炭酸ガスの放出量を減らすことに異論はない。しかし、気候変動を研究する者として、温暖化が止まり、さらにIPCCとCOPの基盤となるコンピュータによる予測が誤っていることが判明した。「2000年から2020年の20年間では、気候変動研究には短すぎる」と批判する者もあると思うが、計算の結果が、2100年までの計算が2020年でもう既に0.6℃から1.2℃ものばらつきがあることも問題である。
もっと詳しく自然変動を研究すれば、炭酸ガスの影響はもっと少ないかもしれない。実際、研究のばらつきは炭酸ガスの行方さえよくわからないことにもよる。地球は 物理実験室で炭酸ガスを入れた箱ではない( 雲、海、森林、氷河もある)。したがって計算には数多くの仮定があり、研究の努力にもかかわらず不確定なものが多い。こんな結果をもとにして温暖化を世界の「大問題」とすべきではない。Hiatusの研究はこれらの仮定を調整して2000年に温暖化が止まった理由を、仮定を変えて調べている。しかし、自然変動は考えていないようである。
読者の中には、我々が本格的な地球温暖化の研究者でないとする方々もあり、「何も知らないくせに」とか、「専門家でないくせに」と批判するであろう。我々はこのようなことを既に長年別の分野でも経験してきた。科学の世界では温暖化問題に限らず、似たようなことは常にある。
さらに、ある分野のある理論が大流行し、多くの研究者が盲目的、排他的な状態になることがあるが、我々はこれを科学哲学でパラダイムと呼ぶ。しかし、それを止めることは 学者間では 可能であり、片付く問題である。より正しいパラダイムが生まれるからである。それが進歩であり科学である。そこが政治とは異なる点である。しかし地球温暖化問題は世界的、政治的、経済的な問題にまで発展し、しかも無知なメデイアが入り込み、暴走中であるので、手が付けられない。
そんな折、少し異なった分野からそれを見ると、「岡目八目」的に他分野のパラダイムを見ることができる場合がある。我々はこの問題は正しく炭酸ガスの影響を理解し、自然変動を十分に研究し、冷静に対処すべき問題であることを強調したい。この記事は 一般市民にもこの問題を理解していただくために書いた。
―――――― NeoMag通信からの補足(1) ――――――
*北極・南極の氷の分析
氷河の氷を分析し、水分子H2Oをつくっている酸素原子Oの「同位体比」を測ると、氷ができたときの気温、つまり蒸発した海水が雪になって降ったときの気温を推定できます。氷を掘って円柱形の氷床コアを採取し、深さ方向の年代と同位体比を決めれば、気温がどのように変わってきたかをつかめます。
そうやって推定された過去1万1000年(完新世)に及ぶ北極圏の気温を次図に示します。1万年ほど前に最後の氷河期が終わって間氷期に入ったあとの気温が、上がったり下がったりしながらも、おおよそ下降傾向をたどってきました。現代温暖期は小氷期からの戻りに過ぎません。(2020年5月号より)
―――――― NeoMag通信からの補足(2) ――――――
*氷河の後退は200年以上前から
人為的CO2(人間活動)のせいなら、氷河の後退が目立ち始めたのはCO2が増加し始めた1940年以降のことになる筈です。しかし過去の資料も当たってみると、氷河の後退は18~19世紀から始まっています。米国のアラスカ州にグレイシャー湾という場所があります(グレイシャー=氷河)。2001年7月に米国地質調査所が発表したデータ(次図左)によれば、そこの氷河は1700年代の後半から後退を始め、1940年代にはほぼ100キロメートルの後退を終えて、地名どおりの湾になっています。
このことは、小氷期からの回復に伴う気温上昇が氷を解かしていったと考えた方が自然ではないでしょうか。(2020年7月号より)
――――――― NeoMag通信からの補足(3) ―――――――
*ホッケースティック曲線のまやかし
この気温とCO2排出量グラフを、20世紀初頭から現在までを3つのステージに分けて比べてみますと、世界の気温上昇とCO2量との間に決定的な因果関係があるとは言えないことがわかります。
<第1ステージ>CO2排出がほとんどなくても気温が上っている年代
<第2ステージ>CO2排出が急激に増加しても気温が上っていない年代
<第3ステージ>CO2排出がさらに増加して気温も上っている年代
以上でおわかりのように、近年の第3ステージの限られた年代のデータだけを取り上げた“温室効果ガス・CO2による地球の危機”論は、年代を拡大した検証を始めると急速に説得力が乏しくなります。
――――――― NeoMag通信からの補足(4) ―――――――
*世界の気温は本当に上昇するのだろうか?
木本協司(気候研究者)
(IEEI国際環境経済研究所 https://ieei.or.jp/2021/02/opinion210208/ より抜粋)
次図は、大気中のCO2濃度と英国気象庁ハドレーセンター/イースト・アングリア大学気候研究ユニットが発表している地表気温グラフ(HadCRUT4)を比較したもので、1997-98年のピークと2015-16年の2つのピークは海洋振動のエルニーニョの影響によるもの。1998-2013年の15年間はHadCRUT4の地表気温はやや低下気味であり、ハイエイタス(hiatus)と呼ばれてIPCC派学者たちを悩ませてきた。
しかし、彼らはやがて気温はモデルによる予測通りに上昇すると信じて疑がわない。炭酸ガスが現在も急増しているのに気温上昇が停止していることから分かるように、ほとんどの「気候」学者のスーパーコンピュータによる予測が誤っていたにもかかわらず、である(炭酸ガスの影響の過大評価)。これはメディアにとって例えhiatusとしても重大なニュースであるべきであるが、今まであまりにも温暖化を騒ぎ過ぎたため、沈黙、無視しているのではないか。
以上、今月号はIEEI(国際環境経済研究所)様および赤祖父、田中両先生のご厚意によりウェブ記事を全文引用させていただいたものです。あらためて御礼申し上げます。
次回は「地球温暖化と温室効果ガスの検証」の最終回として、本テーマのまとめをする予定です。
<参考・引用資料>
「地球温暖化防止運動の暴走」赤祖父 俊一、田中 博 IEEI(国際環境経済研究所)ホームページ
https://ieei.or.jp/2020/06/opinion20060201/
「世界の気温は本当に上昇するのだろうか?」木本協司 IEEI(国際環境経済研究所)ホームページ
https://ieei.or.jp/2021/02/opinion210208/
「正しく知る地球温暖化」赤祖父俊一著 誠文堂新光社
「地球温暖化狂騒曲・社会を壊す空騒ぎ」渡辺 正(著)、丸善出版
「地球温暖化・CO2犯人説は世紀の大ウソ」丸山茂徳、戎崎俊一、川島博之ほか、宝島社
「科学者の9割は『地球温暖化』CO2犯人説はウソだと知っている」丸山茂徳、宝島社
「地球温暖化と温室効果ガスの検証(3)2020年5月号 ネオマグ株式会社
https://www.neomag.jp/mailmagazines/topics/letter202005.html
「地球温暖化と温室効果ガスの検証(5)2020年7月号 ネオマグ株式会社
https://www.neomag.jp/mailmagazines/topics/letter202007.html
「地球温暖化と温室効果ガスの検証(7)2020年9月号 ネオマグ株式会社
https://www.neomag.jp/mailmagazines/topics/letter202009.html