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(6)超伝導永久磁石の可能性

超伝導体が強力な永久磁石になることは既に理論上でも、実験上でも確認されていますが、いわゆる強磁性体とは全く異なる挙動を示し、現在主力となっている各永久磁石の磁気科学的な分類とは別の視点から捉えざるを得ません。したがって、超伝導永久磁石については、独立章として取扱いました。

■ 西暦1911年~1961年:超伝導現象、マイスナー効果、第二種超伝導体の発見

1911年オランダのヘイケ・ケメルリング・オネスによって、水銀が液体ヘリウム温度4.2K(ゼロKは-273℃)で突然電気抵抗がゼロになることを発見し、以来種々の物質の“転移温度Tc(超伝導に相転移する温度)”が測定されてきました。そんな中、1933年ドイツの物理学者ヴァルター・マイスナーとローベルト・オクセンフェルトによって超伝導特有の電気抵抗ゼロ以外の現象“完全反磁性”が発見され、“マイスナー効果”と命名されました。その後、このマイスナー効果は、1935年にロンドン兄弟によるロンドン方程式によって、理論的に説明されたのです。

(1)外部磁場が弱い場合(マイスナー効果の出現)

超伝導体を磁場中に置くと電気抵抗がゼロですから、その瞬間に誘導電流が表面に流れ、外部磁場を打ち消すような磁場が発生し、磁場の侵入を妨げます。これは電磁誘導のレンツの法則でも説明できるもので、“外部磁場に対して逆向きに磁化する=反磁性を示す”ことになるわけです。つまり、外部磁場を加えても超伝導体の磁束密度はゼロで磁化しないのです。(下図1)

なお、超伝導状態ではない温度で先に外部磁場を加えると、物質内部に磁場が侵入しますが、冷却して超伝導状態にすると、磁場が外部に押し出されてしまいます。これは電磁誘導の法則では説明できない超伝導体固有の現象です。

(2)外部磁場を強くした場合(磁場の侵入)

ところが外部磁場を強くしてゆくと、ある磁場強度から磁場が超伝導体内部に侵入し始めます。(下図2)

この時点で一挙に磁場が侵入して超伝導状態が破られる物質を、第一種超伝導体といい、そのときの磁場強度を臨界磁場Hcと呼びます。一方、その時点から徐々に磁場が侵入する物質を第二種超伝導体といい、1961年アメリカのクンツラーがニオブと錫の合金(Nb3Sn)で初めて発見したもので、その侵入し始めの磁場を下部臨界磁場Hc1、全て外部磁場が侵入して超伝導状態が破られる磁場を上部臨界磁場Hc2(下図3)と呼びます。

(3)超伝導体の磁束のピン止め効果

材料によって異なりますが、液体ヘリウム温度(4.2K)でHc1は平均的には1kOe程度と小さく、Hc2は100~10000kOeと大きな値を示すことが多いようです。このHc2の値が大きい第二種超伝導体が高性能な永久磁石になる可能性があり、Hc1~Hc2間の大きさの印加磁場で侵入させた磁束をなるべく逃さずピン止めして大きな残留磁束密度を残すことが技術的なポイントのひとつとなります。

永久磁石(マグネット)の歴史と磁気科学の発展72
超伝導体中への外部磁場(磁束)の侵入ステップ・モデル図