今回は、良くお客様からご質問のある異方性磁石についてのお話をしましょう。
異方性磁石と等方性磁石の違いは?
異方性磁石の作り方は?
(1)異方性磁石、等方性磁石
ある特定の方向のみ強く磁化(着磁)する特徴を持つ磁石を異方性磁石と言い、現在の高性能磁石のほとんどがこの異方性磁石です。一方、どの方向もほぼ同じような磁化の強さを持つ磁石を等方性磁石と言い、フェライトゴム磁石やネオジムボンド(プラスチック)磁石が等方性の代表的な磁石です。同じ材質の磁石同士を比べると、異方性磁石の磁化の強さ(残留磁束密度Brの大きさ)は、等方性磁石のほぼ2倍になり、吸着力は4倍になります。等方性磁石は着磁が容易なので、多極着磁品に向いています。
(2)異方性磁石の製造方法
[合金鋳造または仮焼き]
ネオジム磁石やサマコバ磁石の溶解・鋳造後の原料合金やフェライト磁石の仮焼材は、下図のように多くの結晶粒(黒線で囲まれた部分)の集合です。そしてさらにその中には、同じ方向の磁化容易軸(結晶の中の磁化され易い方向)を持った無数の原子磁石が集合した磁区(赤線で囲まれた部分)が存在します。それぞれの磁区はその磁化容易軸方向が異なりますから、このままでは異方性磁石にはなりません。
[粉砕]
合金中の色々な向きの磁化容易軸が集合した結晶や磁区を、粉砕によって1~5μmまで細かく砕き、一旦バラバラにします。これで、それぞれの粉体は一定の磁化容易軸方向を持つことになります。
[磁場中成形]
粉砕後の材料粉を磁場成形機で圧縮成形します。(金型は非磁性体で磁場が通ります)この時、粉末材料は成形機の磁場と同じ方向に、それぞれの磁化容易方向をそろえるように動き、整列し、圧縮されて固定されます。なお、等方性磁石は磁場を印加せずに圧縮成形しますから、粉末の容易磁化方向はまちまちで固定されます。
[焼結]
下図のように成形された磁石はまだ粉末の圧縮されたもので、相対密度は50~60%程度ですが、高温度での焼結により焼き固められて、相対密度はほぼ100%近くになります。この後、加工、表面処理、着磁の各工程を通って実用磁石に仕上げられます。
さらに詳細に理解したい読者の方は、NeoMagホームページの弊社カタログ中に技術説明を掲載してありますので、是非そちらもご覧ください。